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          三木句会ゆかりの仲間たちの会:樹 水流さんからの読後感想

 

      

       太田酔子さま

 

        8月の読書感想文、拝読しました。

       「わたし」という少女たち、その一人ひとりの無邪気な生活の

       一コマの裏に戦争という比類なき悲惨が隠されていることが

       わかるのは、時を経てのことなんですね。

        悲惨、悲劇を体験した私の親世代と思われる「わたし」の日常を

       特に母と重ねて想像しました。

        母は女学校の勉強もままならない日々の中、学校も自宅も空襲

       で失いました。終戦後、どのように過ごしたか少し知るだけで、

       戦争についてどう思っていたか聞いたことはありません。

        もしかたら、どうも思っていなくて、日々を送ることで精一杯

       だったのかもしれません。

 

        私の知っている「ぼく」の話を紹介させてください。

 

        「ぼく」の父親は製薬会社に勤め、ビタミン剤の研究をしていた

       ため戦争には行きませんでした。ある日、町内で家族の一人が戦死

       するというお宅がありました。ご近所のみなさんがお弔いに集まる

       というので、小学校一年生の「ぼく」も親に手を引かれて訪ねました。

       でも、なんだかずいぶんと賑やかで、これまでのお葬式とはちがった

       様子に「ぼく」はうらやましく思いました。国へのご奉公を立派に

       遂げる英霊を家から出したということに誇りを持ち、それを敬う

       町内の人々。「ぼく」は思ったんです。うちも誰か戦争にいけば

       いいのに‥‥って。

        その時のことを思い出すと、苦しくなって、戦争って本当に怖い

       ことだと思います。

 

        私がその話を伺った時、「ぼく」は80近い紳士でした。

        そして、「やっと孫たちにもそういう話をできるようになった。」

       とおっしゃっていました。戦争が野蛮な行為だと誰もが知っている

       はずなのに、火の粉が舞ってこないところにいる人の発想が一番野蛮

       なんでしょう。

        戦争回避に知恵を持たねば、そう思いながらニュースを見ています。

 

                               樹 水流

 

 

 

 

                 

                          photo: y. asuka

          かたくりの花ひとつづつ群れゐたり   山尾玉藻