三木句会ゆかりの仲間たちの会:飛鳥遊子のエッセイ
ホカロン小事件
2024年、年の瀬も押し迫ったある日、断捨離作業をしていてひどい
ギックリ腰になった。起床時が最悪で、ベッドから離れるのにほぼ直角に
体を曲げて歩を進めないと強烈な痛さに襲われる。経験された方も少なく
ないと想像する。腰を温めるべしとホカロンの「小」を腰に。そして、トイレ
の中に落ちたことに気づかず、自動洗浄で流れていってしまった。が、渦を
巻いて引いてゆく水流が中途半端に戻ってきて水位がいつもより高い。溢れ
るか?!とハラハラする。ホカロン小を落とした意識がないので、なぜ急に
このような現象が起こるのか不可解。何度水を流しても同じ。で、はた!と
気づいた。ホカロン小が落ちて詰まったのだと。
昔はよくトイレが詰まったものだ。そんな時は丸いゴム製の頭に棒がついた
ものーー名前も知らずに使っていたーースッポンスッポンとかーーはまだこの
世にあるのだろうか。ネットで見つけすぐに注文。翌日配達。先端が細く突き
出て奥まで入るよう改良されていた。このようなものでも、時代とともに改良
されていることに小さく感動。が、十分な威力を発揮することもなく失敗。
年末が迫っている。ネットで一番初めて出てきた業者に頼むことにした。
テレビ見かける男性タレントが広告の顔になっていた。彼の立場にかけても
変な会社ではなかろう、と。翌日、若い男性が修理に来た。が、名刺をくれる
わけでも、説明書のようなものをくれるわけでもなく、急いた様子でトイレは
どこですか!と奥へ。考えうる可能性を早口で告げるが、焦るこちらはとにかく
見てください、と作業開始。これは出口で詰まっているのではなく、ずっと
奥の方です、と水道栓を占めて重たい便器を移動。金属製のチェインのような
ものをずるずると押し込む。かなり下です、ほら、7mは入りましたよ、この
道具は1m2万円です、とどさくさに紛れて言う。え?? なに?とこちらの
疑問に答えもせず、会社の規定でそうなっています、と言いつつ、あ、ほら、
音が変わったでしょ!詰まっていたものが取れた音ですよ、とたたみかける。
7mも下の管の中の音が私の耳に聞こえるわけがない。この間15分ほどの間に
3度も道具を忘れた、と車へ取りに行く。プロが作業道具を3つも忘れるって、、
、とここで大いなる疑惑。昨今耳になじんだ”指示役”なる言葉が頭に浮かぶ。
作業が終わり、何か書いたものをと求めてもプリントアウトできないとタブ
レットにサインを迫る。室内に入れてしまえばそこは密室、何があってもおか
しくない、と怖い想像さえ頭をよぎる。彼は本社から請求書がきます、と言い
置いて退出した。
数日後にきた請求書は167,200円。いくら何でも高すぎやしませんかい?ふと
思い出し、昔の業者に連絡を取りセカンドオピニオンを求めたところ、この業界
の協会に入っていない業者はそのような価格設定をしているところがあるとのこと。
ものが引っかかるのは便器と縦管の間の接続部の一番細くなっていているところ
であり、ほとんどのものはここに詰まる。そこを通り抜けて直径15cmほどもある
縦管まで落ちて詰まることは十中八九ない、と。マンションであれば縦管を共有
している下の階からすぐに反応があるはず、とも。その通りである。
初めてのことながら、消費者センターに連絡。経緯を聞いたベテラン職員は
”これはクーリングオフに該当します”と即断。先方と幾度も連絡をとってくれ、
新年をまたいで交渉続行。ともかくも治してはくれたので全く支払わないという
つもりではない旨伝え、ついに請求額は5分の1にまで下がった。
そうこうするうちに、水道管との接続部分からわずかな漏水を発見。すぐに
他の業者に来てもらいパッキングが緩んでいるのを修理。この漏水を伝えた
時点で、悪徳(と断定できる)業者は請求を断念。一件落着をみた。自分がネギ
を背負った鴨だったのだと悟らされた年越しイベントであった。
教訓:自らを”オレオレ詐欺”にかかりうる人間であると認識すべし。動転した
ときは必ず誰かに相談するべし。ネット広告はむやみに信じてはいけない。
あ~~、どれもこれも、テレビで繰り返し注意喚起されていることばかりでは
ないか、、、。
photo: y. asuka
咲き切って薔薇の容(かたち)を超えけるも 中村草田男