三木句会ゆかりの仲間たちの会:樹 水流さんからの感想
✉️ 佐々木千雅子さま
佐々木さんのお正月支度、習慣としてある念の入れ方に地方の行事の重さを感じま
した。コロナ禍を境に、日本各地で伝承されてきた様々な季節の行事や習慣が、さらに
様変わりせざるを得ないであろうこと、想像に難くありません。三陸は大きな津波被
害もあり、高齢化や若者の都会への移住など、伝統や伝承にとっては打撃の大きなこ
とが重なったことと思います。
年神さま、聞いたことはあってもそれが自分には馴染んでいないので、なんとイン
スタントな新年だこと!と我が家のお正月を思います。両親ともに東京、田舎もなく育
った私にはお正月といえば親戚一同が集まる場であり、いつもより新たまった設いが施さ
れるのがせめてものことです。
佐々木さんのエッセイがアップされた今日、私の地元でも毎年恒例のお餅つきでした。
馴染みのメンバーによるお楽しみ会。潮風が届くような原っぱが会場です。女性はほと
んどお餅を丸めたりするだけですが、それでも「お祝い事だから」と勧められて、一度は
杵を振います。杵を落とすように‥‥はできますが、それを持ち上げるのが一苦労。よろ
よろと危なっかしい姿に笑い声です。
大きなお鍋でお湯を沸かし、臼や杵を温め、もうもうと湯気が上がる蒸し器からお米
を移し、炊きたてのお米を杵で潰すように……、今日のエッセイと同じ光景があって、
あまりのタイミングの良さにびっくりでした。
若いとされていた男の人たちがだんだんと「腰が…」などと言い出すようになり、そう
かと思えば年長者が慣れた手つきで良い音を出すのにはさすが!とみんなで盛り上がり
ます。思い思いのお酒を飲みながら、いろいろな味のお餅を食べてわいわいとする一日。
使われる臼、杵はもともと県北部の町内会館のような場所から引き取られたものだ
そうです。見るからにだいぶ古そう。きっと以前は今日と同じような風景が町内会館
の庭先で繰り広げられたのではないでしょうか。そうやって新たな年を迎える準備と
ともに、親睦の場であったことは想像できます。
エッセイ中の鬼胡桃の取り出し方など、釜石市にも縄文遺跡があるようですが、
おっしゃる通り、縄文人の暮らしを彷彿とさせますね。ふるさとのお正月の様子をご
紹介くださり、ありがとうございました。
樹 水流
photo: william r. tingy
七日粥先先代の漆椀 松本文一郎