三木句会ゆかりの仲間たちの会ー有馬英子第一句集『深海魚』より
深海の様子見てくる夜長かな
秋空にピンと張りたる糸電話
ポインセチアクリスマスまで演じきる
冬うららピエロの鼻の忘れ物
風花の誘いに乗りし男かな
少年の眉整える寒の月
どうしても夜をはみ出す寒の紅
三月の力つたわる杖の先
つんつくとつんつくつんとつくしんぼ
辛党の男の前の桜餅
風のほか誰も乗せない花筏
コーラスのメンバー揃う四月かな
陽炎の中であらわになる乳房
葉桜や母と娘の摩擦熱
緑陰に深くかかわるゼウスの掌
万緑や息つめて行くけもの道
梅雨寒や左手で書く私小説
熱帯夜壺から人の手が出るぞ
短夜にひびく手回しオルゴール
はじめてのインターネット汗走る
photo: y. asuka
藻の花や膝まで濡れて女の子 仙田洋子