編集後記
一見の穏やかさの中にも諸々の危惧を孕んだ新年が明け、はやひと月。心から安心して
マスクを手放し、躊躇なく会合や会食が持てる時が早く来てほしいものです。
ウクライナをめぐる欧米各国とロシアの出方も目を離せません。水面下での虚々実々の
駆け引きあってのこと。地下壕で暮らす女性の強く引かれた深紅の口紅が、その意志を表
明しているかのようです。
とはいえ、みなさま、恙無く1月句会をスタートされ、恒例の新年の1句にも、さまざま
なお正月シーンが詠みこまれました。”あるある”な正月句も、なるほどな発見も、時機を
得た発想も、珍しい季語が使われた句も、お正月ということですべて”いいね!”という気
がします。富士山を詠まれた句がいつになく多かったのも、お正月だからでしょうか。
今月の兼題「精」は、苦心のあとが伺われます。米偏に青、訓読みでは「くわしい」です
が、現代の日常ではまず使われることのない訓読みでした。白川 静『常用字解』では「形
声。音符は青。説文に米を択ぶの意味とする。古い文献に、神に供えるための米・麦など
五穀のすぐれて美しいものであるとする。のちすべて“きよい、うつくしい、くわしい” の
意味に用いる」とあります。漢字の背景を識ることは思わぬ発見があり、時の過ぎるのを
忘れます。
1月ブログの写真は、1年間の折々に撮りためた海越えの富士山シリーズ。添えたのは
正岡子規の句。子規は実にたくさん富士山を詠んでいます。まだ外出できた頃の筑波山あ
たりからの句、そして病臥してからの思い出や想像で詠んだような句など。その中から、
彼の暮らしぶりや心理の読み取れる句を挙げてみました。
伊集院 静著『ノボさん 小説・正岡子規と夏目漱石』(講談社)という本があります。
子規と漱石の友情を軸に、当時の子規をめぐる俳句事情を描いた小説です。この本を読ん
で、”俳句、短歌を文学の領域に引き上げた文学者”と言われる人物を、実に身近に感じら
れるようになりました。ご興味のある方は遠慮なくご連絡ください。お送りします。
(遊子・報)
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