放課後 | sanmokukukai2020のブログ

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    放課後

 

   アイスランド子連れ留学顛末記 その3      大塚楓子

 

    留学して、こんなはずではなかったと思ったのは、英語そのものです。40年も前のこと

   です。読み書きに重点のある教育と環境で育ちました。当然、聞くことと話すことには自

   信がありませんでした。ところが、スコットランドに住むことの意味にも気づいてません

   でした。

    必要に迫られ、到着早々に銀行とビザ発行の役所に行かねばなりませんでした。相手の

   言ってることがさっぱり理解できません。街の八百屋さんや肉屋さんになると、さらにお

   手上げでした。学習してきたものはなんだったのだろう、と途方に暮れたことを思い出し

   ます。大家さんはオックスフォード大学卒業生、大学関係者もいわゆる標準語的な英語を、

   とくに私に向かっては使ってくださったので、段々に状況がわかってきました。要するに

   方言、スコットランド訛りです。スコットランドの人は、イングランドに対して自立の気

   概を持っていて、言葉にも誇りを持っています。あえて、いわゆる標準語は使いません。

    高校生の時、修学旅行で鹿児島に行った時に似た体験をしました。港にいたと思います。

   聞こえてくる漁師さんの会話は、ひとこともわかりませんでした。両親が長崎県出身なの

   で、九州弁には自信があったのですが、これは別物でした。

    現在の状況はどうなっているのでしょう?この間の日本の状況と比べてみてもいいと思

   います。方言と標準語両方を使いこなす、いわゆるバイリンガルの状態の人が多いので

   しょう。私と同時期に留学していた日本人は、夜は語学学校に通っていた人が多かったの

   ですが、私は子供がいたのでそれもできず、英語の上達は望むべくもありませんでした。

    おしゃべりな息子は、相手の迷惑などお構いなしにカタコト英語で話しかけていまし

   た。ある日、大家さん夫妻がリビングルームにいらしたところに、息子が入って行き、

   What’s going on here?  と声をかけたのです。慣用的な表現をTPOを間違いなく使った

   のです。大家さん夫妻が驚いて、「どこでいつ覚えたの?」と聞いていましたが、息子は

   もちろん答えられません。私は、大家さんの反応のほうが驚きでした。おそらく、ちゃん

   とした英語らしい表現は初めてだったのでしょう。

    息子のお喋りのお詫びも兼ねて、私は下手な英語は使わないように努めていましたので、

   ずっと「寡黙なMitsuko」と思われていました。 

   (つづく)

 

 

                     

   <写真俳句>

   飛鳥遊子の5句、生き物の写真から選びました。

       

            '21年8月わたしの好きな俳人の俳句

               うかうかと蛇の詫び状みてしまう 

 

 

                ’21年6月わたしの好きな俳人の俳句

                  つんのめる吾を諭すか蝸牛 

 

 

          '21年11月英子さんを悼み

                夏の朝野生馬は飢えかつ自由 

 

 

         '21年6月放課後  

                耳奥に棲むクマゼミは闇の王

 

 

            '22年5月わたしの選んだ特選句

                 諦観の目の涼しさよ檻の猿

 

 

 

 

 

                                   photo: y. asuka

                       ©️ igor stravinsky  by arnold newman