山崎哲男さんからエッセイをいただきました。哲男さんは、三木句会の古いメン
バーのお一人です。激務でいらっしゃるのに、お休みされたことは私の記憶では、
これまで一度もありません。これからも、時事句など独自の視点からの作句で、長
くご一緒してくださることと思います。
俳句と私
山﨑哲男
三木句会には、佐々木 実さん(退会済み)のご紹介で入会しました。現在、日
比谷見附法律事務所で弁護士をしています。
俳句については、人間関係、特に人情の機微を題材にしたいと思うのですが、日
常生活の中で起こっている人間ドラマに焦点が当てられず、苦労しています。
法律は、条文があって、条文に定められた要件に、人間の行動を当てはめて法律
効果を導くという操作をして、紛争を解決しようとします。従って、条文に書いて
ないものは、紛争解決のルート(裁判等)には原則として乗らないことになります。
但し、英米法では、条文に書かれていなくても、衡平法(エクィティー)によって
紛争を裁判上解決する場面があります。
人間の行動は、複雑怪奇なものですから、全てを法律で解決することはできませ
ん。ただ、法律がないと人間社会が円滑に動かないので、社会秩序を維持するには
法律が必要です。
ところで、俳句は、法律の規制外の人間の自由な精神生活の場としてあるもので
す。とはいえ、字数、季語などの規制があり、その枠内で自由に表現できるもので
す。自由に表現できるからこそ、同じ現象を詠んでも個性が発揮でき、文学性が認
められるのでしょう。
三木句会の皆様の俳句を拝読して、分からない言葉が出てくると辞書で確認して、
こんな言葉があるんだと、得をした気持ちになっているこの頃です。
photo: y. asuka
魂も乳房も秋は腕の中 宇多喜代子