わたしの好きな俳人の五句 | sanmokukukai2020のブログ

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   わたしの好きな俳人の五句

 

   坪内稔典(つぼうち としのり)     選んだひと 飛鳥遊子(あすか ゆうこ)

 

   あの木ですアメリカ牡丹雪協会

   そのことはきのうのように夏みかん

   三月の甘納豆のうふふふふ

   東京の膝に女とねこじゃらし

   たんぽぽのぽぽのあたりが火事ですよ

 

    これらの句のほか20数句がネットの『増殖する俳句歳時記』に載っています。

   「うふふふふ」にせよ「ぽぽのあたり」にせよ、びっくり仰天のこんなの、あり~?

   一世風靡というか、もう誰も似たような句を作れないほどに知れ渡りました。かと

   言って坪内氏はふざけた俳句を作る俳人ではなく、実に学ぶことの多い俳句の本を

   たくさん書いておられます。そして上記に『増殖する俳句歳時記』のリンクを貼っ

   たわけは、鑑賞文を書いている詩人の清水哲男氏の評文を読んでいただきたいから

   です。俳句の呪縛から解き放たれたい時、有効です。是非クリックしてください。

    ねんてんさんの『早寝早起き』(創風社出版)。脇腹を抑えつつ、ホント、俳句っ

   て何だろう、、、と考えさせてくれる一冊です。

 

 

   金子兜太(かねこ とうた)      選んだひと 有馬英子(ありま えいこ)

 

   梅咲いて庭中に青鮫が来ている

   この句と初めて出会ったとき、わからない~と叫びました。俳句界ではとても有名

   な句ですので、わからないと言うのが恥ずかしい感じでもありましたが、鮫の存在

   がわからない。気になる句として胸にいつまでも残りました。鮫は春が来たことへ

   の畏怖の感情の象徴だろうかと思ったのです。

   そして、次の句に…。

 

   蛾のまなこ赤光なれば海を戀う

   この句を見つけたとき、兜太は海に憧れていることが解り、庭中の青鮫は海そのも

   のであり、春が来たのがただただ嬉しいのではないかという気持ちに変わりました。

   鮫=怖いと思っていると解らない歓喜。鮫肌が立つ。

 

   霧の夜の我が身に近く馬歩む

   とてもとても安心感の残る句で好きです。

 

   人体冷えて東北白い花盛り

 

   おおかみに螢が一つ付いていた

   今やもう絶滅したと見られる狼、その狼が蛍を付けて、眼光するどく立っている。 

   この姿はまさしく金子兜太そのものです。

   いま人間はギリギリでキリキリとして生きています。

   金子兜太に狼を連れて、いや狼となって来てほしい、心の底からそう思います。

 

 

   日野草城(ひの そうじょう)      選んだひと 佐々木 梢(ささき こずえ)

 

   茸山や夫人晴着に襷がけ

   うら若き妻はほほづきをならしけり

   わが淹れてわがすゝる茶や後の月

   秋夜曲たのし女も脚を組む

   渋柿のわりなき艶をながめけり

 

 

   *次回9月の「わたしの好きな俳人の五句」は、樹 水流さん、太田酔子さん、

   大塚楓子さんにお願いいたします。

 

 

 

                                                                                                  photo: y. kato

                                           追撃兵向日葵の影を越え斃れ    鈴木六林男