2020年5月三木句会報
新任と交代したり春落葉 光樹
えごの花散るソプラノの息つぐ間 梓
紅引かぬ間の長きこと夏迎ふ ゆきえ
流蛍の先は自由詩かもしれず 酔子
間が持てず突然亀の鳴きにけり 瞬泡
麓からこみ上げてきて山笑う 三徳
ひらひらり風の間に間に黒揚羽 花子
風五月ゆびさき緑豆の鞘 梢
触れられず逝くひと悼む白木蓮 朗子
若葉萌え医師看護師の命懸け 晢男
汁あふる新玉葱の白さかな 凛
鎌倉に巫女の朱袴風薫る 秀隆
八十八夜の銘茶賜いし卒寿かな 汐
薫風に集うコーラス仲間かな 英子
美しき五月少女は髪を梳く きょう子
鼓打つ間に狂うらし春惜しむ 楓子
夕焼けて空ひと筋の時間軸 水流
初夏の風一人シャンソン発表会 小梅
白菖は咲きそむどこまでが空 水玉
友情を育む校舎新学期 穂高
距離間を意識する夏伏魔殿 美都子
青芒ひとすじ生と死の間合い 遊子
風薫る5月、俳句の女神さまが微笑んだのは復活なった梓さん。11、10、7点と、
高点句を3つも並べました。「えごの花散るソプラノの息つぐ間」英子さんと遊子
が特選を献上。えごの木はクリーム色の小花の房を下向きにつけ、秋には丸い実を
つけます。澄んだ声で歌うメロディがふっと途切れた瞬間を捉えた感覚が素敵です。
「禅院の開け放たれて立夏かな」「鮎釣りの男の腕水を釣る」いずれも、完成度の
高い句だと思います。このところ活躍著しいゆきえさんの「紅引かぬ間の長きこと
夏迎ふ」は、同感の女性陣9名+男性1名が支持。対照的なアプローチは酔子さん
の「流蛍の先は自由詩かもしれず」の9点句。現代俳句っぽく、「かもしれず」と
余韻を残す手法です。流蛍の措辞がヴィジュアル効果を上げていて綺麗です。他に
も5点句二つ「間をはずす蝶の浮遊やひとに恋」「また桜蘂降る三春一樹の孤独」
いづれもよく考えられた示唆の多い句だと思います。
ご時世を詠んだ句が多いなか、長老のお二人、瞬泡さんと三徳さんは、ユーモラ
ス路線で各々8点をゲット。「間が持てず突然亀の鳴きにけり」亀鳴くというわけ
のわからない季語を笑いに誘い込んだ瞬泡さん、山笑うという大いなる擬人化の季
語をさらに擬人化した三徳さんの「麓からこみ上げてきて山笑う」。この余裕には、
もう、笑うっきゃない。三徳さんには5点句の「饒舌な蝿が割り込む間の二人」も
ありました。
photo: y.asuka