「ひらひらり風の間に間に黒揚羽」は花子さんの6点句。見た通りを素直に置いて
みました、ですが、リズムがいいですね。句ができたら百回声に出して読め、とい
う言い方もあります。自ずと、改良点が見出せる、ということでしょうか。蝶は春、
黒揚羽は夏の季語です。梢さんの6点句は「風五月ゆびさき緑豆の鞘」空豆のこと
でしょうか。「緑」は夏の季語としても使われるので、単に色を言いたかったなら、
ひらかな表記もありでしょうか。「風五月ゆびさきみどり豆の鞘」。特選2つの朗
子さんの6点句は「触れられず逝くひと悼む白木蓮」。衝撃的な海外の埋葬シーン
なども眼裏にあり、疫病死の恐ろしさに、優しい白木蓮がせめてもの癒しのような
句。5点句の「間の悪い防災無線昼寝覚め」もありました。防災無線という俳句に
馴染みにくい措辞の良し悪しはあるでしょうが、同感と感じた賛同者多々。晢男さ
んの5点句「若葉萌え医師看護師の命懸け」も、医療崩壊を背景の作句です。「汁
あふる新玉葱の白さかな」は、素直が溢れる凛さんの5点句。季節感があふれてい
ますね。一方、秀隆さんは雅な「鎌倉に巫女の朱袴風薫る」の5点句。情景が目に
浮かびます。最後の5点句は遊子の「青芒ひとすじ生と死の間合い」。今回の兼題
「間」を読み込んで、この春あっけなく亡くなられた方々を思うと、生のあやうさ
を思わずにいられません。
さて、皆さま、今回初めての兼題を読み込むという試み、楽しまれたでしょうか。
ここからは、瞬泡さんの添削コーナーです。
「即席の筍ごはんに笑み合うて」 田中 汐
この句、季節感が出ていて、とてもいいのですが、言い回しがもう一歩です。ここ
は、中七に間を持たせ、「即席の筍ごはん笑み溢れ」とすれば、字余りも解消して、
すっきりとした句になります。
「たんぽぽのスゲ子ら遊ぶ慰霊塔」 大塚楓子
一句の中であれもこれも言おうとすると、句の姿が窮屈になります。そこで、立派
な慰霊塔にたんぽぽの絮があたかも遊んでいるかのように、「たんぽぽの絮が遊ぶ
や慰霊塔」としたらいかがでしょうか。
(遊子・報)
photo: y.asuka