三徳の俳句森羅万象  | sanmokukukai2020のブログ

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   三徳の俳句森羅万象

 

   倒れしは一生涯のガラス板   桑原三郎

 

    ガラス板がなにかのはずみで倒れて割れてしまったという状況を、5・7・5の

   1句にしたものです。季語はありません。1枚のガラスが、あっと思った瞬間には

   倒れて粉々になり、ガチャンという音響まで聞こえてくるガラスの生涯、この瞬間

   をどのように句にするか。

    倒れる、生涯、ガラス板という判り易い言葉を、助詞「は」と「の」で繋いだだ

   けのシンプルさ。俳句を作る基本の心構えを教えてくれていると思います。何度も

   繰り返し音読して、この基本を学びたいものです。

    桑原三郎さんは昭和8年生まれ、86歳、現代俳句の重鎮です。揚句は昭和49

   年、41歳のときの作。現代俳句協会70周年記念号『現代俳句年鑑』148頁に

   「私の代表句、この一句」として掲載されております。             

               

 

                                                        

  

  

    昨今のコロナウイルスの関係で、句会の皆さんと議論できないのが残念です。 

   3月の通信句会で私が特選とした句について、この場を借りて少し述べさせて頂き

   ます。三木句会では特選1句を選ぶことになっておりますが、私の気持ちとしては、 

   特選にしたい句が3句ありました。それを天地人というならば、次の通りです。

     

      天 卒業式素数となって旅に出よ           樹 水流

      地 しじみ汁振り返らずに子は発ちぬ     関根朗子

      人 汽笛鳴らし花のトンネル過ぎゆけり  神宮前小梅

 

   天の句、素数という数学界の理屈っぽい言葉を季語「卒業」にうまいこと結びつけ

   ています。

   地の句、母と子の心理を見事にとらえて「しじみ汁」の季語がほのぼのと匂ってき

   ます。

   人の句、簡単すぎて皆さんがスルーしてしまったと思うのですが、遊園地のお猿電

   車が活写されています。お猿さんの惚けた得意顔がよく見えてきます。

   三木句会のいい句をもっと楽しみにしています。

 

 

 

                                                                 Cyclists with Umbrellas  Ⓒ  David West