2020年3月三木句会報
今がある八十五回目の春ぞ 光樹
卒業式素数となって旅に出よ 水流
花の枝ゆるり触れ行く路線バス 美都子
鞦韆を繰りて子等空に入る ゆきえ
しじみ汁振り返らずに子は発ちぬ 朗子
牡丹の芽シルクのドレス仮縫中 英子
汝が揺れて私が揺れて菜花かな 水玉
よこ雲の腹夕焼けて涅槃の日 きょう子
こもり居に季の香りの桜餅 汐
鳥のいぬ鳥籠に在る春の闇 梓
花あらば花に寄りくる池の鯉 瞬泡
タナトスよ春陰の地に金縛り 酔子
糸遊に想ひ沈めて散歩道 凛
不自由も不足もなくて蝌蚪群れる 三徳
げんげ田に佇みて知る里の景 穂高
愛憎も昔話か春嵐 小梅
玄関に軍手とハサミ春の朝 楓子
亡き友の聲きこえたよミモザ咲く 花子
猫柳南の風よ疾く吹けと 秀隆
客が皆咳に反応春の宵 哲男
球音無き春選抜に涙あり 梢
息とめて抱擁春のレントゲン 遊子