写真:前列右端が三光院星野香栄禅尼、その横が道明寺さん、その横がバーバラ教授。香栄禅尼の真後ろに立っているのが西井先生。

 

●注釈1

 前回のFacebook投稿で、バーバラ・ルーシュさんがロサンゼルスタイムスに三光院のことを執筆していたことを紹介しました。1989年のことですから、西井香春先生が三光院に来院する以前の記録になります。

 どんなことが書かれているか知りたいとの要望を得ましたので、要約と少しばかりの解説をさせてもらいたいと思います。

 

 バーバラさんは尼門跡研究の世界的な権威であり、コロンビア大学の教授もされていました。三光院とも大変関係は深い方です。

 昨年、所長を務める中世日本研究所が、無外如大(むがいにょだい/最初の尼禅僧)の生誕800年のイベントを行ったのですが、高齢かつコロナ後なのもあり、バーバラさんは来日はされないとのことで、おめもじは叶いませんでした。

 

 1998年には如大禅尼の700遠忌がコロンビア大学で行われ、その実現に奔走したのが星野香栄禅尼でした。

 コロンビア大学から尼門跡寺院第一位とされる大聖寺への要望でしたが、前例のないことで尼門跡たちとの交渉は難航。

 大聖寺から依頼される形で星野香栄禅尼が取りまとめを行いました。

 星野香栄禅尼が資金や記録化のための放送まで取りまとめて実現させたのです。

(このコロンビア大学への旅、撮影実現のための資金調達に関する苦労話や裏話は膨大なので、また別の機会に紹介できればと思います)

 

 取りまとめに協力いただいた公家出身の道明寺さんや、その後に尼門跡になられる特浄明院の伏見さんも同行の上、ニューヨークに渡りました。曇華院の尼門跡はもちろんですが、この旅には西井先生も参加されています。

 

 この模様はTBSで放映され、協力クレジットの最末尾には「星野香栄、西井郁(西井香春先生のフランス料理研究家時代の名前)」と記されています。

 700年遠忌と生誕800年イベントが終わりましたから、大きなイベントはしばらくなさそうですが、研究所の皆さん含めて三光院精進料理を再び味わうことを楽しみにしてもらっています。

 

 以下は記事の要約です。ついで注釈の形で解説を補足しておきます。

仏教寺院で昼食を考える

バーバラ・E・ソーンベリー著 ●注釈1

1989 年 3 月 19 日午前 12 時(太平洋時間)

 東京 — この街に来たら、三光院でランチをとりましょう。この小さな禅寺は、25 年間にわたって寺院料理を一般に提供していることで有名です。

 

 寺院料理を楽しむのに仏教徒である必要はありません。真に日本的な雰囲気の中で、新鮮な食材を使い、想像力豊かに調理された精進料理が、美しく提供されるのです。

 伝統的な完全菜食主義の日本料理の味がここにあります。

 

 私が女性によって運営されている三光院のことを知ったのは、1930年代に西東京に三光院が建立されて、初代住職となった米田宗栄氏の名著『日本のお寺のおいしい食べ物』を読んだことでした。 ●注釈2 ■文献詳細1

 

 米田さんは、過去6世紀(600年)にわたって日本の精進料理の中心地であった京都の出身で、宮廷と歴史的につながりのある寺院での宗教修行の一環として精進料理を学びました。●注釈3

 

 1960年代までに三光院は財政難に陥りました。そこで副住職が米田さんに、資金を集めるため広く一般に食事を提供することを提案。この計画に米田さんが同意したので、三光院の今日の成功につながっています。●注釈4

 

 数年前に米田氏が亡くなった後は、料理アシスタントを勤めていた星野香栄氏が後任となった。三光院に住んでいる尼僧は、星野住職ともう一人の仏教徒の女性だけだ。●注釈5

 

一般女性料理人

 

 調理、配膳、日常の家事のほとんどは経験豊富な一般女性によって行われており、そのうちの何人かは約10年間そこで働いています。●注釈6

 

 参列者は木製の門を通って境内に入り、石の小道をたどって、やはり木造の優美な本殿へと向かいます。日本の家庭と同じように、玄関で靴を脱ぎます。

 

 ダイニングエリアは中庭を望む座敷です。みんな座布団に日本式に座ります。障子をスライドさせて独立したダイニングスペースを作ります。それほど広い場所ではありません。ランチは一度に10名様~15名様までご利用いただけます。

 

 寺院料理は、懐石、つまり茶道とともに発展したいわゆる日本の高級料理の親戚であり、それ自体が禅宗の伝統から生まれました。寺院料理の特徴は、動物性食品を食べることに対する仏教の禁止事項を厳格に遵守していることです。

 

 臨済宗三光院での昼食の最初に、各ゲストに茶わん一杯と小さな豆餅が与えられます(苦いお茶を美味しくするために最初に食べます)。お茶は、茶道に典型的な洗練と思索の雰囲気を象徴しています。●注釈7

 

 その後食事が始まります。女性が漆塗りのトレイ(お盆)で料理を運び、各客の前に置きます。

 このトレイには、季節の食材を使ったさまざまなサイズ、形、色の料理が置かれており、すべてベジタリアンではありますが、驚くべき範囲のおいしい風味、楽しい食感、さまざまな調理法をカバーしています。

 

料理のバランス

 

 伝統的に、寺院の食事には、煮物、焼き物、揚げ物、蒸し物、生の食べ物をそれぞれ少なくとも 1 つずつ含める必要があり、さらに、料理のバランスを達成するために組み込むべき特定の味や色も規定されています。●注釈8

 

 夏には、キュウリの皮から切り取った小さな葉の形の付け合わせを添えて、軽く酢をかけた瓜の細切り。シャキシャキしたサラダも見つかるかもしれません。冷まして味付けした蒸しカボチャ、サヤエンドウ、ゴボウ、豆腐、白山芋を薄い海苔で巻いた料理。揚げた老梅(小麦から作られた)と柔らかい濃い緑色の昆布。シルキーに冷やした胡麻プリンと、甘く煮た青杏の一種。●注釈9

 

 食べ終わるとトレーは片付けられ、白いご飯が提供されます。私の場合は刻んだ青紫蘇で味付けされていました。

 

 ご飯と一緒に、三つ葉、新鮮な椎茸、柔らかい里芋の茎が入ったすまし汁をいただきました。シャキシャキとした大根のスライス、大根の葉の緑色、ピンク色の生姜の3種類の漬物も出てきました。

 

 あらゆる点で満足のいく食事は、緑茶で終わりました。滞在中は、食事や周囲の景色をゆっくりと満喫できます。●注釈10

 

 季節に応じて、ナス、タケノコ、ゼンマイ、キャベツ、レンコン、柿などの食材もメニューに含まれます。さまざまな種類のキノコや海藻、山芋やその他の果物や野菜(生のものと漬物)が年間を通じて使用されます。

 主な原材料には、小麦、豆、でんぷん、味噌、醤油、その他の天然調味料、米、豆腐などがあります。

 

 住職が授業を担当

 

 住職は毎月三光院で寺料理教室を開催している。英語訳と背景説明が付いています。近年、日本人だけでなく外国人の間でも古典的な料理芸術への関心が高まっています。●注釈11

 

 そのうちの一つのセッションに参加してきました。驚いたことに、料理教室(通常の昼食ではありませんが)は、短い時間のグループ禅瞑想から始まります。

 その中で最も難しいのは、規定のあぐらの姿勢で数秒以上座ろうとすることです。それは任意であり、すべてを形式に従って実行しなければいけないわけではありません。●注釈12

 

 星野住職には瞑想指導の時に初めてお会いしました。僧侶の特徴である坊主頭と黒い袈裟をまとったこの強面の女性を目にしたとき、私は一体この先に何があるのか​​と思い始めました。

 

 しかし、寺院の厨房で料理教室が始まると、彼女は温かさとユーモアのある女性であることがわかりました。座禅の目的は、参加者に料理の哲学的基礎について考えるよう促すことです。

 

 住職の指導のもと、常連の料理人の協力を得て、なす、ごぼう、山芋、すまし麺の材料を使った4品の料理を作りました。私たちはレシピを学ぶだけでなく、食べ物の切り方や盛り付け方もいくつか練習しました。●注釈13

 

 自分たちでお盆を並べ、自分たちで作った料理と、用意されていた料理を食しました。星野料理長も参加し、質問に答えたり、雑談したりしました。●注釈14

 

●注釈2

 三光院はそれまでも寺院に集まる関係者に限定して食事を提供していました。現状だと西井先生が公表を反対していますが、大物が多く集まっていたのも記録に残っています。

 既に公表されている事実とすれば、まだ一般に精進料理が提供される以前からの常連であったシャンソン歌手の石井好子さんが「京都にわざわざ行かなくても、東京で本格的な精進料理は味わえる」とエッセイで公表。

 が話題になり、三光院の精進料理は一気に認知度を上げたと伝わっています。

 今回の記事と一緒に掲示する予定の写真は「バーバラ・ルーシュさん」のものと「米田祖栄和尚と石井好子さんの対談風景」です。

 

■文献詳細1

『GOODFOOD fromaJAPANESETEMPLE』SoeiYoneda with KoeiHoshino&KimSchuefftan&RobertFarrarCapon(KodanshaInternational)

 1982年に講談社インターナショナルから発売された米田祖栄和尚と星野香栄御住職様の共著。翻訳本ではなく、出版社からの依頼により最初から英文で出すことを目的に出された精進料理のレシピ本。おそらく海外で最も売れた精進料理レシピ本であり、その後も合計四度の改題も含めて長く増刷り出版され続けた。

 

●注釈3

 尼門跡寺院である曇華院のこと。米田祖栄和尚は、3歳でお寺に入り、5歳から8歳の間に(記録により差異がある)曇華院に移寺。以後、死ぬまで生臭料理(動物性食物)を一切口にしませんでした。

 

●注釈5

 阿部悟由さん。チベット仏教やインド仏教を熱心に学ばれていた学僧。宗派は別ですが、星野香栄禅尼との出逢いにより、読売ランドに勤務しながら三光院に長く居住されていました。

 宗派に対して原理主義を掲げると争いしか生まれません。星野香栄禅尼は宗教宗派には寛容で、それは今のところ三光院の基本方針になっています。檀家や墓地を持たずに精進料理の浄財で運営されている三光院の方針は、この記事の頃からちゃんと定着していたことが伺えます。

 

●注釈6

 この時代は本堂で精進料理が提供されていました。庫裏に広い台所があり、賄い人は常時十名以上。その大半が主婦でした。専業主婦が多かった時代もあり、昼間の間だけ短時間働く方が大半でした。

 

●注釈7

 最初のお抹茶の前に甘味がつくことは今と同様ですが、この時代は最中ではなく饅頭が出ていたようです。三光院の最中は評判がよく、一時はお土産物として販売されていることもありました。

 

●注釈8

 五色、五法、六味とされるもの。淡味は目指すもので味覚ではないから五味としている精進料理家も多いですが、三光院では素材そのものの味わいである淡味を含めて六味としています(より詳しくは西井香春先生の著作、または通信教育教材をお読みください)。

 そして目指すのは雅寂(みやびさび)と呼ばれる他にない唯一のものになります。

 宮中、御所の華やかさは残しても派手にはしない。それは視覚でも、味覚でも、五感全てにおいてそのようになることを目指すのです。

 

●注釈9

 この辺はバーバラさんの誤解も多少ありますが、現在まで続く料理とほぼ同様な献立の説明になります。「グリーンアプリコット」は青杏と訳しましたが、これは煮梅の調理説明で杏で代用も可能としていたからだと推察できます。胡麻豆腐もゴマプリントなっており、今と違って「豆腐」が国際用語になっていなかったことが伺えます。お煮しめも蒸して冷ましたように記述されていますが、当日に煮たものです。このような細かい勘違いはありますが、結論的には素晴らしく美味しいとの褒め言葉ですから、まだな方は是非に味わいに来てください。

 

▲現状問題点補足

 残念ながら近年やってきた代表役員(小泉倖祥氏)は「料理に未来がないから料理に頼らない運営をする」と称して、30年寺院と料理を守ってきた西井香春先生を「役員ではない。役員と認識したこともない。仮に過去に役員であったとしても先代住職が死んでから3年経過したから役員は私が決めれる」として、来院寺の約束を全て反故にして勝手な私物化を進行している最中です。

 後継者も脅迫を伴って退任、退去をさせていってますから(小泉氏が来てから三人の若い女性が小泉氏を理由にして退去していきました)精進料理がいつまで継続できるか不明な状況です。少なくとも後継者の育成が出来ない現状に追い込まれております。

 毎回、10名前後の方にしか触れられていないこの記事ですが(読まれている方となると更に少ないでしょう)、三光院の精進料理が外面だけは極めて良い人物のために危機的な状況になってしまっていることは、もっと広く知られて欲しい事実です。

 

●注釈10

 現在最後にお出しているのは売茶竹延流の啜り茶です。米田祖栄和尚が竹之御所精進料理と一緒に持ってきてくれた煎茶の作法です。が、煎茶を啜り茶ではなくお出ししていた時代もありました。

 

●注釈11

 ICU(国際基督教大学)クラスでは鯨博士夫人であった西脇陽子さん。国連大学クラスでは六角さんがそれぞれ通訳を務めてくれていました。海外の方に細かいニュアンスまで伝えるためにはブロークンイングリッシュでは不都合だとして、星野香栄禅尼がそれぞれのクラスに通訳をつけたのです。

 

●注釈12

 単なる美味しい野菜料理と精進料理の違いを伝えるのに星野香栄禅尼は、短い時間ですが禅体験の時間を料理教室の導入部分で設けていました。

 座禅、立禅、歩行禅の三種のいずれかを、線香一本が燃え尽きる10分前後の間に行います。本文の文章が少しわかりづらい表現になっていますが、これは正式な座り方である結跏趺坐(けっかふざ)以外に、半跏趺坐(はんかふざ)や胡座も認めていたということだと思われます。

 形式主義ではない星野香栄禅尼の教えの顕です。外見や形以上に大切なものがある。

 三光院では作務禅、食禅を大事にしていますが、一方で一般的な禅を否定することもしていません。初心者は形を借りて歩を進める方が分かりやすい場合も多いからです。

 

▲現状問題点補足

 現在、小泉倖祥氏が三光院本堂にて座禅会と称するものを開催しているようですが、それは三光院としては関与外のとこだと認識していもらいたいと思います。

 道義的にも、思想的にも、三光院として推奨が出来るものではありません。

 

●注釈13

▲現状問題点補足

 現在も西井香春先生の精進料理教室は大人気で、キャンセル待ちの状態が続いています。一方で、入会予約をしたのに参加されない方も散見されます。入会された後に都合で来れないのは全く問題ありません。しかし、予約だけして参加もされない場合、本当は学ばれたかった方の機会を奪っていることにもなります。

 気軽に予約だけしようと考えている方は、その辺のご理解、配慮をしていただけると助かります。

 

●注釈14

 西井香春先生も、フランス料理時代の生徒人脈をフル活用して三光院精進料理の予約をし、その場で料理教室にも入門。星野香栄禅尼の人柄に惹かれて精進料理への転向を決意されました。

 

以下は本文の中でも補足データ的な文章になります。

三光院(東京都小金井市本町3-1-36)は、中央線武蔵小金井駅北口よりタクシーで5分です。

食事はランチのみとなります。木曜(三光院休館日)を除く毎日、正午と午後2時の2部制です。寺院は 8 月と 12 月 25 日から 1 月 10 日まで休業します。

●注釈15●この辺は現在と休日は異なりますので、最新のをご覧ください。

 

ご予約とメニューの選択は事前に行う必要があります。価格と提供される料理の数が異なる3つのプリセットメニューがあります。料理は料理人にお任せし、旬の食材を使用しています。

メニューの選択

パーティーのメンバーは同じメニューを選択する必要があります。料金は、月メニュー(5品)2,600円(約22ドル)、雪メニュー(6品)3,000円(25ドル)、禅メニュー(9品)5,000円(42ドル)です。すべての食事には、スープ、ご飯、漬物、お茶が含まれます。追加料金でお酒もございます。

●注釈16●この辺のコース名も若干今とは異なりますね。花ではなく禅!

 

 寺院料理教室は通常午前11時から午後3時まで行われます。毎月第3水曜日ですが、スケジュールは異なります。初めての方も大歓迎、要予約です。

 レッスン料金は昼食込みで1,000円です。お寺の厨房を使用して指導を行っているため、授業開催日は通常の昼食提供はありません。

 

  ちなみに、三光院、及び、西井香春先生のsnsは、複数の人間が個別に、良い意味で好き勝手に投稿管理しています。したがってこの記事が紹介されたことを管理者aは知りませんでした。おそらく管理者bは今後も知らないでしょう。そんな感じですが、管理者cが見つけてきた記事を管理者aが頼まれもしないのに解説するんですから、雰囲気的には堅苦しくなくて良いですよね?何が言いたいか? 

 時々誘ってはいるのですが、中々仲間になってくれる方がいないので、引き続きsns管理者を募集していますよ!ってことです。興味ある方は関係者に直接、またはdmかメールをください。

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