かつては古い木造建築が密集しており、震災では多くが倒壊しただけでなく、地震後に発生した火災によって一面が焼け野原になってしまった。
当時訪れたときにその光景を見て唖然としてしまった。
よく戦争の話で空襲を受けたとかいう話を聞くが、話を聞いてもそのようすは想像するしかない。
しかし、被災した地域の光景を見ると、そうした風景が現実の物として実感できるのだ。
その後神戸のまちは徐々に復興していったが、長田区もその町並みが大きく変化しつつも人々の懸命の努力によって立ち直っていった。
その復興では地元の有志による熱い志をもって行われた事業が大きなシンボルとなり、今もまちづくりの核として大いに活かされている。
午前中に神戸市立博物館を見学した後、長田区へ足を伸ばした。
長田区へはJRの場合、三ノ宮から新長田へ。
この地区は震災後、兵庫県出身の漫画家 故横山光輝の作品を使った町作りを進めている。

新長田駅を降りて、西側の大丸が入っているショッピングセンターの裏に出ると、広い公園がある。
そこには復興のシンボルとなったものが建っている。



神戸市長田区復興のシンボルとは、横山光輝の漫画「鉄人28号」の等身大?像。
これは地元有志の手作りで建立されたもので、実際に鉄でできている。
一昨年、「機動戦士ガンダム」30周年に東京お台場に建立され、今は静岡に建つ等身大ガンダム像は樹脂でできているが(1/1プラモ?)こちらは鉄で作られている。
町工場みたいなところで作られたもの。
設定では、鉄人の身長は18mということで、その実物大に作られている。
周囲の高層ビルに比べると決して高くはないが、やはり間近で見ると迫力がある。
鉄人28号は、少年、金田正太郎の父親が戦時中に作ったロボットである28号を正太郎がリモコンであやつり、悪人が操るロボットと対決するもの。それ以前は「鉄腕アトム」のように自分の意志を持って行動する正義のロボットはいたが、この鉄人の画期的なところは、ロボット自身には意志がなく、リモコンで操作するため、操作する人間によって正義にも悪にもなりえるところ。漫画の絵柄はけっこうかわいらしいものだが、その設定やストーリーはハードなものがある。
鉄人はすでに4度もアニメ化されており、どれを見たのかでその人の年代がうかがい知れる。
初代はモノクロ時代で、「ビルの町にガオー」「びゅーんと飛んでく鉄人28号 グリコ、グリコ、グ~リ~コ~」という歌が思い浮かぶ年代の人もここを見ている人には多いはず。
この鉄人像はその初代もしくは原作版をモデルにしている。
私の場合は80年代の2代目の世代。ぐっとスリムになった鉄人が登場する。主題歌は「正義は燃え立つ太陽の使者~」。
3代目はほとんど見たことはないが、なんでも初代の続編という設定で、主人公は正太郎の息子だとか。4代目は現代のクオリティで初代をリメイクしたもの。深夜アニメとして放映されたらしい。

今も大勢の人たちが訪れて、鉄人の前で同じポーズをとって記念撮影していた。


最近のビルは高いから、18mではそんなに巨大には見えないかもしれないが、それでも地元の人たちにとって震災からの復興のシンボルというだけではなく、今も町作りのシンボルとして大きな力を与え続けている。