


タマゴタケ(玉子茸) Amanita hemibapha
担子菌門ハラタケ亜門ハラタケ綱ハラタケ亜綱ハラタケ目テングタケ科テングタケ属
amanita アマニタ(ギリシャ語「manitai」小アジアの地名からといわれる)
hemibapha ヘミバパ(半分染める)
夏~秋に広葉樹林や針葉樹林の地上に発生。中型~大型きのこ。
幼菌時は白い外被膜に覆われ、卵形をしている。
カサは直径5~15cm程度、中高饅頭型から中高扁平に開く。
血赤色~橙赤色で、表面平滑。周辺部に条線がある。条線は黄色みを帯びる。
柄は円柱形で黄色、表面には橙色のだんだら模様がある。
上の方に橙黄色の膜質のつばがある。
ヒダは黄色でやや密。
根本には白色で厚い膜状の大型のつぼがある。
内部の肉も黄色。
上の写真は千葉県でのもの。なぜか地元ではこのタマゴタケにはほとんどお目にかかったことがない。
たいがいはチャタマゴタケで、西日本のシイ・カシ林に多い。他につぼ以外が真っ黄色のキタマゴタケもある。
これらのタマゴタケは東南アジア系といわれ、ヨーロッパのものとは別種。
欧州のは「セイヨウタマゴタケ(Amanita caesarea)」といい、「caesarea(カエサレア)」とは、ユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)にちなむ。そのためか「帝王のきのこ」とも呼ばれ、好んで食用にされる。日本のタマゴタケとの区別点は、柄にだんだら模様がないことなどであるという。最近はこのセイヨウタマゴタケも国内で発生が報告されている。ほかにも形態的に類似した種が存在するという。
「タマゴタケ」という名は幼菌時の真っ白な卵形の姿から連想されているのだろう。カサは赤いが、幼菌を切断すると、断面に黄色い部分が見えるので、それも玉子のようにも見える。
いくら食用にされるとはいえ、猛毒種の多いテングタケ属にあって、似ている毒きのこもあるので注意を要する。
同じ赤いカサを持つベニテングタケはカサの白いイボが特徴のように思われるが、それがとれていることがある。タマゴタケとちがい、ヒダや柄などが白いこと、ツボはリング状で、タマゴタケのような玉子型ではないことで区別できる。それにベニテングタケはシラカバなどカバノキ科樹下以外は発生しない。
タマゴタケモドキはカサが黄色で一見、キタマゴタケのようだが、カサに条線がないこと、ヒダとツバが白色であることから区別する。
2015年12月28日追加
これまで国内での「タマゴタケ」はA.hemibaphaとされてきたが、実はhemibaphaはインドやネパールなどの方に分布する種で、国内のタマゴタケとはかなりちがう。そして、日本のタマゴタケは中国やロシアに分布するA.caesareoidesであることが判明したという。さらに、これまで国内でもセイヨウタマゴタケが発見されたとされたいたものも、caesareoidesであったという。


上の2点は信州日和田高原でのもの。このとき採取された幼菌は、さっと湯通ししオリーブオイルをかけて食された。カサのオレンジ味が強く、柄のだんだらも顕著ではないため、セイヨウタマゴタケに近いものだったのかもしれない。(これもカエサレオイデス)

タマゴタケ成長過程?断面にもすでにカサと柄の部分がわかるようになっている。これは縦切断。
右の方のは横切断。

2010年9月の台風通過後の千葉県でのタマゴタケ。いつもなら立派な成菌がたくさん見られる時期だが、昨年は発生が遅れていた。

1020年10月の京都での「きのこ展」で展示された標本。左から、チャタマゴタケ白色型、チャタマゴタケ茶色型、右2点はチャタマゴタケ黄色型。これらについては後日くわしく紹介する。