名言(159) ― 文学の価値や役割のこと | saniyのブログ ― 言葉に学ぶ

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これまで出会った言葉たちについて考えていくブログです。まず、名言から始めています。

よい文学があれば、世界は救われるであろう。
(注:マラルメ氏が知人に語ったとされる言葉。)
[ステファヌ・マラルメ(19世紀のフランスの詩人)]


ドストエーフスキイはここで自分が得たものをのこりなく表現した。情熱と愛と信仰とをもって。この本が書ければ人類は救われる。一人のこらず救われる。救って見せる。そう思って書かれたものに違いない。
(語注: ・ドストエーフスキイ=ドストエフスキー。19世紀のロシアの文豪。 ・ここ=ドストエフスキーの最後の長編小説『カラマーゾフの兄弟』のこと。大作『カラマーゾフの兄弟』は、たしかに、そういった内容をいくつも持っている。)
[武者小路実篤(作家)の文章「『カラマーゾフの兄弟』について」より。]


文学の面白さは、慰(なぐさ)みもののそれとは異なり、人生的な面白さである。
(語注: ・それ=面白さ。)
[桑原武夫(フランス文学者)の『文学入門』(岩波新書)より。]


文学は、なくてもすませる精神のアクセサリーではない。文学は精神の最も強力な機能の一つである。
[ヘルマン・ヘッセ(ドイツの作家)]

牡丹花(ぼたんか)は/咲き定まりて/静かなり/花の占めたる/位置のたしかさ
(語注: ・静かなり=静かであるよ。 ・占めたる=占めている。)

[木下利玄(歌人)の詠んだ短歌]

ところてん/煙の如(ごと)く/沈み居(お)り
(語注: ・沈み居り=水の入った桶底に沈んでいる。)
[日野草城(俳人)の詠んだ俳句]


 

※、
すばらしい実体験や史実や作り話や対象やテーマを、巧みな構成・展開と言葉を用いた表現によって、作品化した文学作品(小説・戯曲・詩・和歌短歌俳句川柳など)は、良い作品であれば、世界や人に、面白みや楽しみだけでなく、救いや感動やインパクトをはじめ、すばらしい体験やすばらしいものを与える。

また、上の通り、俳句や短歌などは、対象(自然や動植物など)を巧(たく)みに生き生きと表現していくことで、その対象の面目(めんぼく)や良さが新たに発見され示されて、その対象が「救われていく」ということもある。上でマラルメ氏は文学(詩など)のこの役割のことを考えていて、そう言ったのかもしれない。

そういう意味で、志と文才を持ったすぐれた作家やすぐれた文学作品の使命や価値は大きいものがある。


我々は、過去現在未来に、そういった良き文学作品を見つけていきたい。

 

なお、映画・ドラマや漫画や音楽や絵画や彫刻や料理なども、良い作品であれば、同じことが言えるだろと思う。
[追記更新:24/07/05]


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次の★に、当ブログでこれまで投稿した投稿記事[名言(1)~名言(159)
を事項別に分けてリンクさせました。


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