辺り一帯には荒涼とした禿山しか見えない不毛の地。

 

 

鉱山に住む妖怪「敷次郎」が出たという尾岡山県成羽町の小泉銅鉛山。

 

 

山また山の山の奥、岡山県の山奥にひっそりと存在する魔境。

 

 

伊予(現・愛媛県)別子銅山など数百年続き採掘した鉱山に出たという妖怪「敷次郎」。その姿は普通の坑内夫と同じ格好で、常に坑内にすみ、顔の色は蒼白で、歩くときも人間と同じような足音がするが、言葉は一切通じない。体からは鉱石を採掘するような音や、水を汲むような音がするという。

 

とにかくこの山の敷次郎は時々食物をねだり、食物を与えないと、噛みついたりして仕事の邪魔をする。 この敷次郎に噛まれた傷は医薬では治らず、仏前に用いる打敷(仏具の敷き物)のきれ、もしくは袈裟の一片を焼いて灰にしたものを油で練り、傷に貼りつければ治るという。 また、この妖怪が出るときには、その前兆らしきものがあるそうで、まず両足の爪がはがれるような感じや、肌に粟を生じたりするそうだ。

 

昔の鉱山では落盤や出水などの事故の発声はそう珍しいことではなかった。鉱山作業は常に死と隣り合わせで、事故の度に多くの犠牲者が出た。救助されずそのまま地中深くに埋まったままの遺体もあるという。


犠牲者の無念が坑内に残り彷徨っているのが「敷次郎」で、妖怪というよりも幽霊に近いものかもしれない。

 

井上円了の『妖怪学』という本に、ある人が一度この妖怪を見ようと思って機会を待っていたところ、去る年、備中(現・岡山県)の小泉鉛山に行ったときに見ることができた、と載っている。

 

 

敷次郎が出たという小泉銅鉛山は岡山県高梁市成羽町小泉の吉備高原に位置する。高原の南側は成羽川によって削られた石灰岩の断崖となっている。海抜500m前後にある小泉は起伏の激しい「のろ地形」をしていて、窪になった場所に水田が階段状に見られ、民家が点在している。

 

 

小泉鉱山の開坑は平安時代初期の808年(大同3)と伝わっていて、初めの頃は鉛や銀を産出していたが、後年は銅鉛山として稼働したと伝わる。江戸時代には泉屋吉右衛門が経営権を取得して隆盛を見せたが、別子銅山に経営の主力を傾けることになり20年ほどで手を引いた。その後は広兼氏など地元の鉱山師が経営を担っていた。

 

1870(明治3)年に住友が買収、1881(明治21)年には三菱の傘下となったが1918(大正7年)年に閉山した。

 

小泉銅鉛山への道は長く厳しい。岡山自動車道賀陽インターチェンジから国道484号、313号を経由して岡山県道300号宇治下原線までは順調、同県道436号布寄下原線に入った途端に不安を感じるようになる。

 

4km程進んだところで左の視界が開ける。

 

 

少し進んだ丁字路に看板。

 

 

ここから1km先に目指す小泉銅鉛山がある。

 

 

この先地獄が待っておる。

 

 

道幅は車幅ギリギリで離合困難、雑草や積もった落ち葉で道の端がわからない。この先、哭倉村・・・じゃねーよ!!

 

オラ、ワクワクするぞ!!

 

 

看板から800m進んだ山側に突如として現れた土砂の山。

 

 

これは鉱物カスや鉱脈へ到達するまでに掘削した土砂岩石を廃棄したもので「ズリ」と呼ばれる。目的地はこの西側に位置する巨大なズリ。

 
薄暗い杉林のトンネルは哭倉村・・・じゃねーよ!!
 

 

500m程進んだところで視界が開けた・・・

 

 

地蔵。

 

 

露出した山肌の上に鳥居は哭倉神社・・・じゃねーよ!!

 

 

二又を右へと進む。

 

 

道幅イコール車幅、運転注意。

 

 

進んだ先に駐車スペース有。

 

 

突き当りに観音寺。

 

 

便所の脇にぶら下がった吊り手水。

 

 

やはりここは哭倉村・・・じゃねーよ!!

 

ズリの上に立つ鳥居。

 

 

どこから参拝する・・・!?

 

 

来た道を少し戻ったここから!?

 

 

鳥居のみで社殿は無い様子。

 

 

扁額「山神宮」。

 

 

一礼して鳥居の中に・・・

 

 

狛犬「阿」。

 

 

狛犬「吽」。

 

 

え!?狛犬「吽」が真っ二つ!!

 

 

切り口の鋭さから「かまいたち」のような現象じゃないかと思うんだがね。

 

振り返るとここが高い場所にあることを理解させる景色。

 

 

あそこに天空の村。

 

 

視線をを右に・・・

 

 

こちらにも天空の村。

 

 

向こうからこちらを見たら天空の鳥居。

 

 

見下ろした今日来た道。

 

 

反対側の盛り土の上に上がって・・・

 

 

足元に赤銅やターコイズブルーのザレがゴロゴロ。

 

 

遥か下まで続くズリ・・・

 

 

荒涼としたあの世のような景色の中に観世音菩薩立像・・・!?

 

 

枯れ木の根元部分がそう見えただけだが、唵 阿嚧力迦 薩婆訶 合掌。

 

◆近隣の岡山魔境観光地

・羽山第2トンネル 岡山県道436号布寄下原線・同道300号宇治下原線経由約8km15分

 

・広兼邸 岡山県道436号布寄下原線・同道435号宇治長屋線経由約11km25分

 

・吹屋ふるさと村(千枚駐車場) 岡山県道436号布寄下原線・同道435号宇治長屋線・同県度85号高梁坂本線経由約12km25分

 

・無明谷(入口) 岡山県道436号布寄下原線・同道435号宇治長屋線・同県度85号高梁坂本線・同道33号新見川上線経由約18km30分

 

◆参考資料

『【図説】日本妖怪大全』 水木しげる 著 講談社 発行

『決定版 日本妖怪大全 妖怪・あの世・神様』 水木しげる 著 講談社 発行

『日本妖怪大事典』 水木しげる 画 村上健司 編著 KADOKAWA 発行

高梁市公式ホームページ - 地名をあるく 46.小泉 -

岡山県高梁市成羽町 小泉鉱山の鉱物

小泉鉱山

 

◆概要

名称:敷次郎

鎮座地:岡山県高梁市成羽町小泉

●アクセス

自動車:岡山自動車道賀陽ICより国道484号・同313号・岡山県道300号宇治下原線・同県道436号布寄下原線経由約26km45分