江戸時代から続く老舗中の老舗、上野広小路松坂屋。

 

 

松坂屋の創業者伊藤祐道は、織田信長に仕えた小姓で森蘭丸・早川蘭丸と並ぶ伊藤蘭丸で三蘭丸とよばれた。

 

 

祐道は関ヶ原の戦いより10年、将来に安泰の治世を予見し、武士の生活を捨てて商人への道を選んだ。1611(慶長16)年秋、故郷の清州を後にして妻子を連れて、名古屋本町に呉服小間物問屋を開いた。祐道は大坂夏の陣で豊臣方について討死。2代祐基は父の遺志を継ぎ、1659(万治2)年に名古屋茶屋町に呉服小間物問屋「いとう呉服店」を開業した。

 

 

1768(明和5)年4月、11代祐恵が「上野松坂屋」を4,517両で買収して江戸に進出。

 

 

当時の江戸は政治、経済、文化の中心で上野界隈は一番の盛り場であった。祐恵は永年江戸市民に親しまれてきた「松坂屋」の名を残し、商標を「いとう丸」に変えて「いとう松坂屋」として開店した。

 

 

業績は順調で売れに売れまくり、1916(大正5)年上期に名古屋本店を追い抜き、昭和戦前まで松坂屋各店の中で首位であった。

 

幕末から明治にかけての度重なる火災、震災そして戦災を乗り越えて、1929(昭和4)年4月1日鈴木禎次設計のルネッサンス様式、地下1階・地上7階建の本館が開店した。

 

 

1930(昭和5)年1月1日には地下鉄銀座線上野広小路駅が開業。

 

 

松坂屋の地下食品売場と直結した。

 

 

当駅は当初建設計画にはなかったが、松坂屋の申し入れにより開設が決定。1932(昭和7)年の三越前駅よりも早く日本初の地下鉄直結の百貨店となった。

 

現在外装はパネルに覆われており往時の姿を見ることはできない。

 

 

しかし中央階段やその脇に設置されたエレベーターなどに開店当時の豪奢な佇まいが見られる。

 

中央階段

 

中央エレベーター

 

設置時に日本初のエレベーターガールが登場した。

 

2号階段

 

屋上神社

 

靏護稲荷神社由来記

(かくごいなりじんじゃゆらいき)

 

 もともと靏護稲荷神社は今から185年余りの昔、文化12年(1815年)2月の午の日山代伏見(現 京都府)の本宮に願い出て、江戸の根岸(現 荒川区東日暮里)の里に建てられたものです。それ以来、当時の江戸市民の深い信仰をあつめて今日に至っています。

 明治14年(1881年)1月の或る夜、神守の老爺が神殿付近で白狐を認め、その場所を調べたところ一巻の掛軸が残されているのを発見しました。怪しく思いその掛軸をひもといてみると、豊川稲荷大明神の尊像でしたので即座にその旨を松坂屋いとう呉服店(当時)の店主に告げ、神璽と共に社殿に奉祀して、今日に至ると伝わっています。

 この靏護稲荷神社は火防の神として世々付近の住民の難を救ったことが数々あると伝わっています。ことに大正14年(1925年)月の日暮里大火の際は、付近がすでに危うく見えましたが、霊験あらたかにも神域、社殿無事に消失をのがれましたことが、付近住民の記憶に残っていると聞き及んでいます。

 この本館屋上にある靏護稲荷神社は、昭和4年(1929年)上野松坂屋の竣工の際、開店に先立ち2月18日二の午の吉辰を占い、王子神社社司に願い、東日暮里にある靏護稲荷神社の神璽を分霊したもので、地上30メートル超の本館屋上に奉安、遷座の式を行い、以来今日に至っています。

 

平成13年3月

 

以上、由緒書看板全文転載。

 

スカイガーデン

 

上野の三パンダ(見パンダ、言わパンダ、聞かパンダ)

 

1954(昭和25)年10月20日大丸の八重洲口開店や1957(昭和32)年そごうの有楽町進出などを受けて、1954(昭和29)年4月南館建設工事着工。第1期工事は地下3階、地上4階、1956(昭和31)年4月1日開店。

 

 

5階以上の工事が続き、1957(昭和32)年3月20日南館落成。

 

 

その規模は地下3階、地上7階、総面積24,200㎡、本館と合わせて50,000㎡を超えた。

 

 

本館屋上遊園地が南館屋上に移設された。

 

 

翌年4月に本館4階と6階をブリッジで連結するなど数次に亘る増改築が実施された。

 

 

南館は2014年3月営業終了、跡地に2017(平成29)年11月4日上野フロンティアタワーが開業した。

 

 

テナント構成は地下1階に松坂屋、地上1階~6階にPARCO_ya上野店、7階~10階にTOHOシネマズ上野、12階~22階は賃貸オフィス。

 


松坂屋上野店は立地からその顧客層は下谷、本所、浅草および東北地方の大衆。販売品は高級品より廉価品で商売の軸足は薄利多売。娯楽場化していく三越や松屋などに対し、松坂屋は買い物をする場とし実質本位を貫いた。

 

 

松坂屋上野店は東京メトロ銀座線上野広小路駅地階直結。JR東日本山手線および京浜東北線の最寄り駅は御徒町で上野駅ではないので要注意。JR御徒町駅および東京メトロ日比谷線仲御徒町駅、都営地下鉄大江戸線上野御徒町駅、京成本線京成上野駅などとも地下通路でつながっている。

 

2017(平成29)年11月開業の上野フロンティアタワーと松坂屋上野店およびJ.フロントリテイリングが関わる周辺施設を総称し「シタマチ.フロント」と名付けて発信。

 

 

上野御徒町エリアの魅力に加えて、さらに新たな文化やライフスタイルを創造し、このエリアにさらなる活気を呼び込むことをねらいとしている。

 

◇店舗データー

〇2017年度

名称=松坂屋上野店

所在地=東京都台東区上野3-29-5

TEL=03-3832-1111

営業時間=10時00分~20時00分、中2階~2階10時00分~19時00分、3階~8階10時00分~18時30分

売場=B1~8F・RF

売場面積=32,256平方メートル

年商=39,375百万円

売上順位=47/199(17年度百貨店店舗別売上ランキング)

ホームページ=松坂屋上野店

※参考資料

〇2000年度

名称=松坂屋上野店

売場面積=35,622平方メートル

年商=74,790百万円

売上順位=23/1000(00年度大型店舗ランキング)

 

◆参考文献

『松坂屋七十年史』 松坂屋70年史編集委員会編集 松坂屋発行

『流通・サービスの最新常識2019 日経MJトレンド情報源』 日経MJ(流通新聞)編 日本経済新聞出版社発行

『流通経済の手引き2002年版』日経流通新聞)編 日本経済新聞出版社発行