鳥取県内の優れた建築物を選定した「県民の建物100選」を巡礼するシリーズ、4件目は、第2章 物語る歴史と風土 より 茅葺と名園「尾崎(おさき)家住宅」

 

尾﨑家は守護大名大内氏の子孫で、船地主であったと伝わる。

 

室町時代に宇野に入り、近世以降は宗門改め等を行う宗旨庄屋や大庄屋を務めた。


江戸時代後期、五代清右衛門の代(1745-1772)に、それまでの屋敷が手狭になったため、現在の敷地に移転、新築した。

 

 

敷地内には主屋座敷に面して江戸中期、明和(1764―1772)頃の作庭とされる尾崎氏庭園「松圃園(しょうほえん)」があり、借景となる後背の林および水田とあわせて国指定名勝に指定されている。(昭和12年指定、平成16年追加指定)

 

 

国指定名勝

尾崎家庭園

昭和十二年十二月二十一日指定

 

 尾崎家は代々河村郡の大庄屋をつとめた家柄で、当時の権力や富力の大きさは、今に残る屋敷構えと庭園によくうかがうことができる。

 主屋の屋根形式は伯耆型の寄棟で、名称の庭園「松圃園」は書院座敷の南東にある。この庭園は小池泉観賞式の形式に属し、池の中央部には出島が造られていて左に入り込みを見せ、そこには枯滝石組として三尊形式の配石をしている。また、池泉に中島が設けられているが、亀島の形式が弱く、江戸時代中期庭園の特徴が見られる。

庭園に使用されている庭石は、近くの海岸と千石船により持ち込まれた紀州の海岸に産出する粗造の安山岩で、荒波に侵食された痕跡が明瞭で、書院前の護岸の角にも自然石の手水鉢ががある。

 なお、庭を構成する植栽には、ソテツ・クロマツ、サツキ、ウメ、モチノキ、モクセイ等があり、園外の松山を背景によく調和し、この地方における造園技術の変遷を物語る上で貴重な庭である。

 平成十五年十月

鳥取県教育委員会

文部省

 

以上、看板全文転載。

 

 

 

主屋と仏間、さらに主屋と一連で作庭された松甫園や、土蔵、新蔵、質蔵、南蔵、米蔵、味噌蔵、板蔵、ワラ置場、旧味噌蔵・薪小屋、門長屋及び塀などの付属建物など豪農の屋敷構えが一体となって保存されており、歴史的価値が高く、2013(平成25)年8月7日国の重要文化財に指定されている。

 

 

2017年度から10年計画で、主屋など9棟の保存修理工事が進められている。

 

 

昨年3月、それに伴い建物の一部を分解して部材を取り外したところ墨書が見つかった。

 

 

部材の表面に元文4(1739)年9月2日、河原村(現 鳥取市青谷町日置周辺)の大工・善助が建てたと記されていたという。

 

◆概要

名称:尾崎家住宅

所在地:鳥取県東伯郡湯梨浜町宇野1518
施工:善助
建築主:尾崎家
構造:木造

駐車場:無

公開状況:非公開

●アクセス

鉄道・バス:JR西日本山陰本線倉吉駅から日交バス橋津線小浜・石脇行乗車60分・宇野西口下車徒歩5分
自動車:山陰自動車道泊・東郷ICから約5分

 

■参考文献

『とっとり建築探訪 県民の建物100選』 『県民の建物100選』編集委員会 編 社団法人鳥取県建築士会 発行

国指定文化財等データベース