1760(宝暦10)年に建てられた倉吉市に現存する最古の町屋建築「旧牧田家住宅」。

 

 

旧牧田家の初代仁右衛門は、大坂の豪商「淀屋」の番頭だったと伝わる。淀屋が闕所となった一方、仁右衛門は倉吉で商売をはじめ、その数年後には大坂で店を構え「淀屋清兵衛」と名乗ったという。旧牧田家は「淀屋」の屋号を持つことから、この建物は「倉吉淀屋」とも呼ばれている。

 

 

その倉吉淀屋にて、倉吉市の仏師 小谷和上(おだにわじょう)さんの作品展「仏師和上とときめく会仏像展 ポツンと一佛」が開かれている。

 

 

小谷さんは富山や京都で彫刻を修行し、全国の社寺仏閣の彫刻を手掛け帰倉。以降40年に亘って倉吉で神仏像のほかにも彫刻やテーブル、ベンチなどのインテリアまで多種多様な幅広い作品を手掛けている。

 

 

また、倉吉市指定有形文化財・木造十一面観音立像の修復や市内施設での仏像彫刻の指導なども行っている。

 

中部地区で10年以上に亘って個展を開いており、年毎のテーマに沿った大胆な展示構成で来場者の目を惹く。

 

 

今年のテーマは「ポツンと一佛」。

 


 

等身大の不動明王像が迎えてくれた。

 

 

不動明王は、観音さんやお地蔵さんと並び、お不動さんと呼ばれ親しまれているメジャーな仏様。

 

不動明王は大日如来の化身とされ、梵名のアチャラ・ナータは「揺るぎない守護者」を意味する。

 

 

その起源はヒンドゥー教のシヴァ神とする説があり、シヴァの前身はヴェーダ神話に登場する暴風雨神ルドラとされる。暴風雨は破壊的な風水害ももたらすが、同時に土地に水をもたらして植物を育てるという二面性がある。このような災いと恩恵を共にもたらすことから、残酷な側面(ルドラ)と、慈悲深く穏やかな側面(シヴァ)の二つ性格が不動明王にも受け継がれている。

 

怖い顔をしてるのは、如来の優しい顔だけでは正しい道を分かろうとしない悪い者を屈服させて導くため。その一方、仏道に入った者に対しては常に守護して見守る。この二面性が起源のそれだと考えられる。

 

 

右手に持った三鈷剣(さんこけん)は、魔を退散させると同時に人々の煩悩や因縁を断ち切る。

 

 

左手に持った羂索(けんさく)は、悪を縛り上げたり、人々を縛り吊り上げてでも煩悩から救い出すための投げ縄のようなもの。

 

 

また、左目が半眼なのは、悪者と殴り合ったからではない。

 

 

天地眼といい上から下まで総てを見渡しているという意味がある。これは天台宗の決まり事で、真言宗では正眼。

 

個展では仏像の他にも多種多彩な作品を見ることができる。

 

完成後は間近で見ることができない格子天井飾り。

 

 

今にも動き出しそうな龍頭。

 

 

コーヒーカップを模したカフェテーブル。

 

 

中に虎。

 

 

夜になると飛び出してくるからガラスで蓋をしているのだとか・・・

 

コーヒーカップの下のテーブルの注目すべきは脚。

 

 

手前は月に叢雲、奥は尺八。

 

 

尺八が彫られているのは、小谷さんは明暗流虚無僧で全国行脚をされてることにちなんで。

 

今回は展示されていないが、智頭杉を刳り貫いたおよそ5メートルの丸木舟も代表的な作品のひとつ。

 

また、魚板づくりの実演なども見られ、アトリエでの制作風景を感じることができる。

 

 

個展はあさって27日(日)まで。

 

◆個展概要

名称:仏師和上ときめく会 仏像展

期間:2022(令和4)年3月19日(土)~27日(日)
時間:午前9時-午後5時(最終日は午後4時閉場)
会場:倉吉淀屋

所在地:鳥取県倉吉市岩倉町2280
入場料金:無料

駐車場:新町市営駐車場(※1時間まで無料)、26(土)・27(日)淀屋前の野島病院駐車場にも駐車可