JR境港駅から南西に直線距離で約1.2km、外江町の住宅密集地で見られる不思議な光景。

 

 

アパート敷地の一角に立つ古木、その足元にある御社と鳥居。

 

 

約10年前、境港にIターンしてすぐに行っていた。

 

 

木や御社は変わらないが、アパートの外観は劇的な変化を遂げていた。

 

 

これは村境や分かれ道、峠などの路傍にあって疫病や悪霊を防ぐために祀られる道祖神の類で、当地では「サイノカミ」と呼ばれる。

 

 

境港市内にも各地区に数カ所残っていたが、近年の開発工事や道路整備によって姿を消してしまい、市内で残るのは外江町の当社のみ。

 


 

境港市指定文化財

外江町の才ノ木

 

 ここ才ノ木神社の境内には、祠・鳥居のほか、エノキ・クスの巨木がそびえ立っている。神社や木の由来は定かではないが、地元では「才ノ木さん」と呼ばれて親しまれている。

 江戸時代、村の入口や分かれ道には、村や旅を守る神として「サイノキ」「サイノカミ」「道祖神」と呼ばれる巨木や祠などが祭られていた。地域によって石像や木製の人形を祭るところもあったが、中でも、樹勢の強いエノキは、生命力が強いことから信仰の対象となることが多かった。信仰の起こりは定かではないが、松尾芭蕉が著した「奥の細道」(一七〇二刊行)には、旅に誘う神として登場している。

 また、村人にとって身近な存在であることから、病気平癒の神、縁結びの神などとしても親しまれてきた。ここ才ノ木神社は、昔から耳病を治す神として知られ、地元を中心に熱心な信者を集めている。木の根元には、信者が願いを込めて吊るした椀が飾られており、進行に託した人々の思いが伝わってくるようである。以前はこのような場所が市内各地にあったが、今ではここ一ヶ所を残すのみとなった。先人達の信仰や暮らしぶりを伝える場所として、後世に残していくべき地域の財産である。

 

平成二十三年九月一日 境港市教育委員会

 

以上、説明看板全文転載。

 

 

弓浜半島におけるサイノカミ信仰の主なものは、耳の遠くなった人が木椀に穴を開けてヒモを通し、サイノキに吊して通じの良くなることを祈った。

 

 

また、足が強くなるように、ワラジを吊して祈るともいわれる。明治時代までは、ワラで作った馬(わら馬)を供えて祈った。

 

10年前とほぼ変わらぬ佇まい。

 

 

不思議だけれども、どこかホッとする光景。

 

登録番号:23

指定名称:外江町の才ノ木

文化財の種別:民俗文化財(有形)

指定日:平成23年9月1日

所在地:境港市外江町

公開状況:公開

所有者:白尾神社・西灘神社・清芝神社総代会

アクセス

鉄道:JR境線馬場崎町駅より徒歩5分

バス:はまるーぷバスメインコース徳山商店下車徒歩2分

アクセス難易度:★★

 

◆参考文献

『境港市の文化財ハンドブック』 境港市文化財保護審議会 編集 境港市教育委員会 発行