断崖にへばり付くように建てられた寺の建物群。
20~30年ほど前には既に無人で、廃墟化が進行していた。現在、建物群はすべて倒壊。緑に侵食され、今まさにその存在が消えようとしている。
小豆島霊場八十八ヶ所番外「済徳寺」。
寺の横に滝があり、その袂に不動明王像が祀られていることから鳴滝不動尊とも呼ばれる。
小豆島の北岸を走る香川県道26号土庄福田線沿い、土庄町小海(おみ)の大坂城残石記念公園南に聳える山の中腹に位置する。
麓からの参道は通行可能だが、谷を跨ぐ橋が老朽化による崩落の危険性が高いため通行不可。
谷を隔てたとなりの山には車道が整備されていて、滝の上から下る参道が比較的楽に辿り着ける。
ただし車道は、狭隘で離合困難、地元車の通行があるため要注意。また、終点近くにガードレール未設置区間があるため、落ちれば確実に死ぬヨ。加えて落石にも注意。
同所を訪れたのは、2005(平成一七)年・2014(平成二六)年・2020(令和二)年の3回。
終点近くの車道から下に見える建物群は、年々崩落と緑の侵食が進んでおり、もう間もなくここに廃寺があることが分からなくなる。
■2005(平成一七)年撮影
■2014(平成二六)年撮影
■2020(令和二)年撮影
車道終点の駐車スペースから普通に歩いて7~8分、キリキリ歩けば5分ほどの距離。
駐車スペースから緩い下りのすぐ先を流れるせせらぎの左手は断崖。
落ちた流れが滝となる。
下を覗き込むことができるが柵などはない。
落ちたら確実に死ぬヨ。
せせらぎの先に人為的に作られたと思しき石段。
滑り易いので足元注意。
廃屋の脇を抜けた先、ひたすら下るのみ。
下って。
下って。
一昨年の平成30年7月豪雨の影響だろうか?
参道に土砂が流れ込んだ上に落ち葉が積もっており、不案内且つ滑り易い。
廃寺までの全行程3分の2ほどで鳴滝と不動明王像が出現。
水音、涼やかなり。
残り3分の1の行程は、さらに泥と落ち葉がうず高く積もり、さらに滑りやすい。
参道の終点直前、行程最後の大苦難。
参道右にせり出した巨石、左は断崖、落ちたら死ぬヨ。
前進か撤退か、悩んだ末に前進。
巨石を越えると廃寺。
初めて訪れてから15年を経て、荒廃が進み建物群の倒壊が加速度的に進んでいた。
■2005(平成一七)年撮影
■2014(平成二六)年撮影
■2020(令和二)年撮影
鐘楼を覆う蔦は枯れ果て、釣り鐘は見えているが撞けない。
■2005(平成一七)年撮影
■2014(平成二六)年撮影
■2020(令和二)年撮影
麓の参道から上って来ると、建物に向かって左側に出てくる。
■2005(平成一七)年撮影
■2014(平成二六)年撮影
麓の参道側から境内に入ったアングルにて。
■2005(平成一七)年撮影
■2014(平成二六)年撮影
■2020(令和二)年撮影
はて、納経所の前に黄色い木箱・・・!!
健康に、美容に、プラッシーじゃない!!
シーホープって、何や?
昭和な照明。
恐怖の便所あり。
ただし、建物群の最奥。
2014年、建物群の倒壊に巻き込まれる危険があるため辿り着くことは不可。
2020年、建物群は倒壊してしまっており、それらを越えて辿り着くことは可能。
だが、まったく行く必要性がない。
2014年の鐘楼。
蔓に阻まれ、鐘は撞けない。
2020年の鐘楼。
撞木が垂直にぶら下がり、やっぱり鐘は撞けない。
撞く必要がない。
さ、帰ろ。
上って。
上って。
上るだけ。
ゆく河の流れは絶えずして。
諸行無常の響きあり。
もう、ここに来ることはないだろう。