漆黒闇の中から、ガサガサ・・・

 

 

「今でもいるぞー」

 

 

熊本県天草郡の草積越とういう峠道に現れたといわれる油すまし 。

 

 

マンガでは将棋好きなゲゲゲの森の村長として描かれています。

 

元々、油すましは伝承として残っている妖怪で、明確な姿形がありませんでした。それに姿形を与えたのが水木しげるさんです。

 

油すましのユーモラスな姿は水木さんの創作で、横に広い頭部のデザインは文楽人形の首(かしら)の一種である「蟹首」をモチーフに描かれたものと考えられています。

 

 

水木さん曰く「妖怪は昔の人が残した遺産だから、その型を尊重し後世に伝えるのがよい」として、昔の絵などを参考にしたり、柳田國男の『妖怪談義』にあらわされた民間伝承として明確な姿形を持たないものに創作したりして姿を与えました。

 

 

油のつく名前の妖怪は多く、電氣が発明される前は明かりといえば、ランプや行燈で燃料には油が使われていました。油はとても身近なものだったのですが、燈火に使われる油はひじょうに貴重だったため、こういった妖怪が生まれた背景として、油を粗末にしてはいけないという戒めの意味合いが含まれているように思えます。

 

現在、油といえば石油ですが、江戸時代は菜種油などが使用され、庶民は安価な鰯の油を使っていました。魚の油ですから、ネコが嘗めることが多かったようで、油を嘗める化け猫の描写の基になったと考えることができますね。

 

◆参考資料

『妖怪の理 妖怪の檻』 京極夏彦 著 角川書店 発行

『決定版 日本妖怪大全 妖怪・あの世・神様』 水木しげる 著 講談社 発行

『日本妖怪大事典』 水木しげる 画 村上健司 編著 角川書店 発行

『鬼太郎くんの仲間たち 妖怪「対比」図鑑』 水木しげる 監修 やのまん 発行