米子市角盤町1丁目の大規模店「やよいデパート」は、鉄筋コンクリート造の地上6階地下1階、敷地は3千平方メートル。

 

 

開業は1970(昭和四五)年で、開店時よりキーテナントとして入居していた地元スーパー丸合が地下1階から地上3階までの食料品、衣料品、生活雑貨などの売場の約7割を占め、70年代には単体で70~80億円の売上を記録、やよい全体では90億円台の売上がありました。

 

 

しかし郊外に大型店が次々に進出したことによる中心市街地の空洞化で業績が悪化し、2013年7月末に丸合が撤退したため一時閉店。

 

 

同年秋に県外のディスカウントスーパーを誘致しましたが、他のテナント誘致は進まなかったことから不採算に歯止めがかからず、昨年1月に経営破綻しました。

 

この1年間、中心市街地活性化のシンボルとして、跡地利用が検討されてきましたが、同店の土地建物を米子市内の不動産業者が昨年末に取得。老朽化に加え、耐震工事が必要になことを考慮し、採算面から建物を解体し平面駐車場にする方針であることが分かりました。

 

 

米子市と市社会福祉協議会が、同店閉鎖による影響を調査するため、地元高齢者のみの世帯を対象に買い物状況調査を実施し、622人の回答を得ています。それによると「とても不便」が4.7%、「不便が21.2%」と回答、「普通」と「便利」は合わせて69%と、同店の閉鎖の影響は限定的であることが判明しています。

 

半径500m程の範囲に他のスーパーなどが立地していることに加え、至近にドラッグストアやコンビニエンスストアの進出が相次いでいることから、近隣住民の選択肢が無くなっているわけではありません。

 

同店撤退の影響を大きく受ける周辺の啓成地区は、2013年時点での高齢化率は市内27校区ワースト4の31.31%。近隣の角1下区自治会の世帯数は、やよい開業時の70年代には200世帯でしたが、13年には34世帯と激減。デイリーユースの大型店が立地できる場所でなくなってしまっていることが理解できます。

 

 

中心市街地の老舗大型店であるということから大きく騒がれていますが、それは局地的かつ情緒的で、単なる錯覚にすぎません。間口広く商店街の一角を占めていた店舗が閉鎖されたというインパクトが大きいのは事実ですが、実際の影響は限定的。それはシンボリックな物件であるということにすぎず、俯瞰してみると中心市街地の人の流れに大きな影響を与えるものではないように思われます。寂しい、寂れる、といった情緒に流されることのない冷静な判断が求められるところです。