松江駅前を行き交う人たちを見ると、三越の紙袋をさげた人を多く見かけます。三越のトリコロールカラーの紙袋を模したそれは、松江で唯一の百貨店「一畑百貨店」のものです。
一畑百貨店は、一畑電気鉄道と三越が提携し、鉄道の直営事業として1958(昭和三三)年10月に松江市殿町に開業したのがはじまりです。このため、紙袋のデザインが三越を模したものになったようです。
1971(昭和四六)年4月、1982(昭和五七)年9月、1988(昭和六三)年10月の3回にわたり増床。業績は順調に拡大し、1984(昭和五九)年8月に株式会社一畑百貨店として独立。
1994(平成六)年5月1日に開店した松江サティの影響で、打撃を受けたジャスコ松江店が閉店。同店を核とする商業施設ピノも閉鎖。一畑百貨店も松江サティの影響で、94年度以降は三期連続で赤字を計上。
当時の一畑百貨店は、旧市街地の殿町に立地しており、旧館・新館の二館体制で、売場面積はわずか1万2千平方メートル。
百貨店の顔である1階の売り場面積は、わずか650平方メートル。店舗前の道は一方通行で一車線のみ。駐車場は260台とモータリゼーションの波にも取り残されていました。
そこで起死回生策として打ち出したのが、JR松江駅前のジャスコ松江店跡のピノビルへの移転・増床計画。これに伴い1996(平成八年)年10月に新会社松江ターミナルデパートを設立。
親会社の一畑電気鉄道はピノビルを50億円で買収。一畑百貨店は10億円を投じて改装。1998(平成一〇)年3月22日に旧法人の株式会社一畑百貨店が営業していた旧松江店を閉店。同年4月1日、新会社松江ターミナルデパートが営業する新松江店が開業するに至ります。
地上6階・地下1階、衣食住のすべてを網羅したフルラインの高質な品ぞろえと地域色の鮮明化でSCなどとの差別化を図り、一定の効果を上げています。
なお、デパオクは立入禁止のため、そこから松江市街を望むことはできませんが、代わりにシースルーエレベーターから望めます。
眺めはイマイチですが(汗)
旧店舗は県庁近くの県民会館となり。
旧店の閉店後に建物は解体され、現在は県民会館駐車場として利用されています。
山陰中央ビルの一部を旧新館として1982(昭和五七)年より入居。旧本館と空中通路で結ばれていました。現在も塔屋に当時の名残が見られます。
新店舗の開業からまもなく20年を迎えます。松江駅前の景色として市民の日常の光景になった感のある同店。
その正面に設置される懸垂幕で、その時々の出来事を知ることができます。
2011(平成二三)年は松江開府400年を祝うイベントが実施されていました。また同年8月1日、隣接する東出雲町と合併し20万都市松江が誕生しました。
そして今年、松江城国宝決定!!
一畑百貨店の懸垂幕の変遷は、松江の歴史でもあります。
館内にはラッキースポットが点在。それぞれの入口で奇妙な像がお出迎えしてくれます。
1階・正面入口を守るのは「昇運童子』
「起きる刻だよ 朝日のように 運も昇るよ」
1階・シャミネ側入口を守るのは「追い風童子』
「こんな小さな私だけれど いつも頑張るあなたの背から そっと風をおくりましょ」
それにしても、どこかで見た覚えのある顔立ち。作者は彫刻家の藪内佐斗司。平安遷都1300年事業のマスコット「せんとくん」の制作者です。
もう一体は、2階・駐車場連絡口を守っているようですが未確認です。
◇データー(2013年度)
一畑百貨店 松江店
島根県松江市朝日町661
TEL0852-55-2500
営業時間=10時~19時(6Fレストランは10時30分~20時30分、一部20時閉店)
売場面積=13,943平方メートル
年商=88,53億円
165/213(13年度百貨店店舗別売上ランキング)
※参考資料(1999年度)
一畑百貨店 松江店
売場面積=13,943平方メートル
年商=100.81億円
449/1000(99年度大型店舗ランキング)
松江サティ(現イオン松江SC)
売場面積=15,483平方メートル
年商=112.00億円
355/1000(99年度大型店舗ランキング)
◆参考文献
『流通・消費2015勝者の法則 日経MJトレンド情報源』 日経MJ(流通新聞)編 日本経済新聞出版社 発行
『流通経済の手引き2000』日経流通新聞)編 日本経済新聞出版社 発行
「月刊ストアーズレポート 2015年6月号」 ストアーズ社 発行
「月刊ストアーズレポート 2000年5月号」 ストアーズ社 発行