「山中一揆」とは、江戸時代の中期1726(享保一一)年に美作国津山藩領で起こった大規模な農民一揆のことです。山中の範囲は、藩領西部の真島郡(現在の美甘村、新庄村)及び大庭郡(湯原町、八束村)を指し、域内には山中一揆の史跡が点在しており、地域の人たちによって大切に守られています。

 

4月に訪れた「美作桜紀行」の番外編「山中一揆の史跡をめぐる日帰りドライブ」最終回は、山中から遠く離れた津山。吉井川沿いの奥津街道の五体の首なし地蔵です。

 

首なし地蔵・津山市二宮 2015.04.08

 

院庄滑川刑場で処刑された山中一揆の指導者六名(牧の徳右衛門、見尾の彌次郎、土居の忠左衛門、大森の七左衛門・喜平治父子、富東谷の與七郎)を祀ったものだとされます。六名を祀っているということですが、首なし地蔵は五体。なぜじゃ?

 

姫新線院庄駅前を通る奥津街道を東へ約500m進んだ場所にあります。

 

JR院庄駅 2015.04.08
JR院庄駅 2015.04.08
JR院庄駅 2015.04.08
JR院庄駅 2015.04.08

 

奥津街道は歩道やセンターラインのない狭隘な街道にもかかわらず、交通量は多め。首なし地蔵付近に駐停車するスペースはありません。交通障害や事故の原因にもなりますので、お車でお越しの方は、車中から通過する際にご覧ください。

 

首なし地蔵・津山市二宮 2015.04.08

 

この先、津山駅寄りに美作三大社の一社に数えられる古社「高野神社」があります。

 

高野神社 2015.04.08
高野神社 2015.04.08

 

同社は中世以降、領主や藩主の崇敬が篤く、津山藩主・森氏により社殿の造営や社領の寄進が行われています。

 

高野神社から院庄駅へと戻ってみましょう。奥津街道に歩道はありませんが、一段上がった吉井川堤防に沿って歩道が設けられています。

 

首なし地蔵・津山市二宮 2015.04.08
首なし地蔵・津山市二宮 2015.04.08
首なし地蔵・津山市二宮 2015.04.08
首なし地蔵・津山市二宮 2015.04.08

 

首なし地蔵は、青野石油店本社西側、佐野食品の敷地内にあります。街道に下りる階段がありますので、地蔵堂の正面に立ってお参りできます。交通量が多いので、左右に気をつけて渡りましょう。

 

首なし地蔵・津山市二宮 2015.04.08

 

首なし地蔵の他に、大きな地蔵尊や墓石のようなものが見えます。その背後に、まだ新しい由来書きが掲示されています。

 

首なし地蔵・津山市二宮 2015.04.08

 

首なし地蔵

 

 西側から約一.五米の地蔵「日本回国、享保十一年三月(一七二六)供養施主新田村是休」と記してある。次に高さ約六十糎(センチ)の地蔵五体(頭部がない)が並ぶ。続いて力士墓が立つ「浜風岸右衛門墓、門弟中、文化十二年十一月七日(一八一五)金剛力院弧年量哲信士」を刻む。東側に高さ六十~七十糎の石碑(上部が折損)「文化十三年(一八三〇)寅八月吉辰津山、本納大乗妙典日本大社」とある。

 新田村は、現在の津山市新田。頭部のない五体の地蔵は、津山城松平二代目城主松平浅五郎侯(幼少六才)時代の事、享保十一年三月(一七二六)山中一きの首謀者として、滑川口吉井川原で処刑された仲田村池田徳右衛門、見尾の樋口弥治郎と、津山城の獄中にて死刑にされた東茅部村七右衛門とその子喜平治、そして川崎の刑場で処刑された土居村忠挫衛門と富東谷村谷村與七郎の六名であるが、一体少ないのは、山中の遺族が持ち帰ったものとおもわれる。

 大和町内会において、平成八年屋根を建造、毎年地蔵祭りで懇ろに霊を弔っている

 

 平成八年三月、津山百景(津山市)に選定されている

 

  平成二十一年十月吉日

 

設置者           

二宮歴史文化財顕彰会

 

以上、案内板全文転載。

 

祀っているのは六名なのに、地蔵は五体の謎が解けました。大きなお地蔵さまと墓石に謎も解けました。

 

首なし地蔵・津山市二宮 2015.04.08

 

ピカピカの赤いよだれ掛けやベベ着た首なし地蔵さんたち。うす気味悪さや怖さを感じることはありませんでした。地元の方たちが熱心にお世話をされています。この日も新鮮な花を生け、お掃除をしていました。

 

首なし地蔵の前の通りを「奥津街道」といいましたが、それが正式な名称なのかどうか分かりません。院庄駅西側、姫新線の踏切名が「奥津街道踏切」と記されていましたので、便宜上そう呼ばせていただきました。

 

JR院庄駅・奥津街道踏切 2015.04.08

 

奥津は岡山県北部で鳥取県と隣接する町で、現在は町村合併により鏡野町となっています。奥津には美作三湯に数えられる「奥津温泉」があります(ちなみに他の二湯は、湯郷温泉、湯原温泉)。

 

JR津山駅側から吉井川沿いに奥津街道を西進すると、首なし地蔵手前、青野石油店本社の角に「(右)旧々伯耆街道」と「(左)旧出雲街道」の分岐を知らせる角柱が立っています。

 

奥津街道・津山市二宮 2015.04.08
奥津街道・津山市二宮 2015.04.08

 

さらに西進し、首なし地蔵を過ぎた先、今度は「(右)旧伯耆街道」と「(左)旧出雲街道」の分岐を知らせる角柱が立っています。

 

奥津街道・津山市二宮 2015.04.08
奥津街道・津山市二宮 2015.04.08

 

右に進むと上述の奥津街道踏切に至り、さらに西進すると院庄駅に至ります。

 

院庄駅前には、ショッピングセンター「ウエストランド」があります。

 

ウエストランド・マルイ本部 2015.04.08

 

同SC内には、岡山・鳥取両県内において23店舗をのスーパーを経営するマルイの本部が置かれています。

 

4月に訪れた「美作桜紀行」の番外編「山中一揆の史跡をめぐる日帰りドライブ」からおよそ3カ月も経ってようやくの最終回(苦笑)

 

さらなる番外もあります。いずれ日の目を見ることもあるでしょう。いつになるかは秘密ですが。

 

・・・まぁ、こげなこったす。

 

※日帰りドライブとしていますが、本レポートは4月8・16・24日の3日間に分けて出かけています(津山地域が4月8日、真庭地域が4月16・24日)。真庭地域を2回訪れているのは、凡ミスを犯しててまったための写真の撮り直しという理由です。鳥取県西部から自家用車で出かけるのであれば、楽に1日で回れる距離です。しかし、それぞれの地域にそれぞれの魅力あるスポットが点在していますので、それらを楽しむなら、津山地域と真庭地域を分けて出かけられることをお薦めします。