山陰道が貫く壷瓶山の東、鳥取県道299号赤松淀江線沿いにある米子市水道局福井送水ポンプ場に隣接する水源地は「田井の沼(かま)」と呼ばれています。
太古の時代に存在していたという淀江湖の名残といわれており、古代から近世にかけて干拓が進み、小さな沼に姿を変えてしまいました。
その字の如く、水田に湧く水源という意味だそうで、水源地として湧水を汲み上げるまでは、水があふれていたということです。
田井の沼(かま)
田井は福井の古い村名です。田んぼの中に湧くこの沼は、かつては湧水池が7~8か所もあり、泳いだり、川魚を捕ったりもできました。底なしともいわれ、孝霊山の中腹の沼に落ちた牛がここに現われたとか、この沼に落とした焼餅が壷瓶山の北東端の「岩の鼻」に浮いた、などの伝承もあります。
昭和30年代に町の上水道施設ができてからは、徐々に陸地化が進み、水生植物にも影響を与えていきましたが、太古からの淀江平野の変遷を秘めた貴重な泉です。
以上、『市民が選んだよなごの宝八十八』より全文転載。
この沼の底からはるか遠くに見えている孝霊山の中腹へとつながっているのか?
沼に落ちるといずこへワープするのか、興味深いところではあります。ま、命があればの話ですが。
う―――む、おそるべし底なし沼。あるいは、旅の扉。
しかしそれよりもおそろしいのは、沼の前に立てられた「米子市水源地につき立入禁止!入ったら法令により罰せられる!」の警告札。興味本位で近づくと、官憲のお世話になることになります。孝霊山の中腹の沼や岩の鼻ではなく、米子警察署の留置所にワープしてしまいます。
◆参考文献
「市民が選んだよなごの宝八十八」 よなごの宝88選実行委員会 編