異次元人ヤプール人との戦い、ダブル主役のひとりが途中降板するなど、迷走を続けたウルトラマンA(エース)。

 

地球防衛軍に代わって組織された超獣攻撃隊のTAC(タック)の北斗、南隊員は広島県福山市出身。今野隊員は親戚が岡山県笠岡市在住。吉村隊員は岡山市北区吉備津(旧吉備郡真金町)というように、なぜだか備中・備後国(岡山県西部・広島県東部)に集中している謎。このため、何度か岡山ロケが実施されています。

 

その岡山が舞台となった作品のひとつが、翌73年夏からはじまった「あなたの知らない世界」(日テレ)に先んじる形で放送された第16話「夏の怪奇シリーズ 怪談・牛神男」(1972年7月21日放送)。

 

ゲストは、驚き・桃の木・山椒の木!!蟹江敬三氏です。

 

休暇をもらい帰省中の吉村隊員が知り合ったヒッピー青年・高井。この高井青年こそが我らの敬三。ディスカバー・ジャパン!!(東海道・山陽新幹線岡山延伸記念タイアップ大作戦!?)の一環として二人が訪れたのは、岡山市吉備津の鼻ぐり塚。

 

鼻ぐり塚・福田海 2015.01.05

 

食肉用に殺された600万頭(当時)にも及ぶ牛の供養として鼻ぐり(鼻輪)が納められてます。

 

鼻ぐり塚・福田海 2015.01.05

 

あろうことか、その鼻ぐりを腕輪として持ち帰った罰当たりな敬三。

 

鼻ぐり塚・福田海 2015.01.05

 

その結果、天罰覿面!!怪僧によって牛型超獣へと変身させられてしまいます。

 

ちなみにこの怪僧は、「オマエはオマエを信じなさい。ホレ、信じなさい。オマエはオレを信じなさい。ホレ、信じなさい」とは別人(あれは、マグマ超人マザロン)。また、今野隊員でもありません。異次元人ヤプールが変身したものです。

 

牛の怨念と人間を合体させて誕生した牛神超獣カウラは、地球上の生物と宇宙怪獣を合成して造り出された超獣に相応しい体です。しかし、その変身過程がなんとも微妙。草を食む牛に謝る半牛の敬三。それを怖がる本物の牛。笑えます。やがて巨大化し、市街地でビフテキを食べていた人間たちを、その怨念からか食べるカウラなのですが、ふと疑問が。牛って草食のはずなのになぜか肉食。これは牛の怨念の仕業ではなく高井青年の怨念なのか??

 

物語を端折って、牛の呪いが込められた鼻ぐりが、エースに蹴り飛ばされて腕から外れ、鼻へと付けられて動きが止まるカウラ。次の瞬間、投げ飛ばされて元の姿に戻る敬三、めでたし。

 

 

本作の脚本は、石堂淑朗氏。石堂氏と蟹江氏の初タッグ作品でしょうか。後に放送された『ウルトラマンレオ』の第50話、恐怖の円盤生物シリーズ!「レオの命よ!キングの奇跡!」(1975年3月21日放送)の脚本も石堂氏で、劇中登場する星人ブニョの人間体は蟹江敬三氏です。こちらも敬三の怪演がトラウマもののエピソードです。

 

牛の鼻ぐり塚は、吉備津神社(※最寄に「吉備津彦神社」という似た名称の神社がありますのでお気をつけください)の石段前から北へ約300m、福田海(ふくでんかい)という宗教団体の施設内にあります。

 

吉備津神社 2015.01.05
吉備津神社 2015.01.05
吉備津神社 2015.01.05

 

石段下の辻角に設けられた看板が目印です。

 

鼻ぐり塚・福田海 2015.01.05

 

看板に従い歩いた路地から振り返った一枚。

 

鼻ぐり塚・福田海 2015.01.05

 

周辺に吉備津彦神社や黒住教本部があるため、正月には周辺の道路が大混雑します。この福田海へと続く細い路地を抜け道として利用する車が多く、しかも高速で走り抜けるため、徒歩で通行の際にはご注意ください。

 

鼻ぐり塚・福田海 2015.01.05
鼻ぐり塚・福田海 2015.01.05
鼻ぐり塚・福田海 2015.01.05
鼻ぐり塚・福田海 2015.01.05

 

不思議と言えば不思議な話、この辺りを通った時、ふと食肉のにおいがしたのですが、あれは気のせいだったのか!?

 

なお拝観には、護摩木料として100円が必要です。社務所にお納めください。

 

鼻ぐり塚・福田海 2015.01.05

 

中堂を囲む49の石塔は、行基の説く「弥勒四十九ヶ院浄土説法」に依るものだということです。

 

鼻ぐり塚・福田海 2015.01.05
鼻ぐり塚・福田海 2015.01.05
鼻ぐり塚・福田海 2015.01.05

 

鼻ぐり塚は、ここを抜けた先。

 

鼻ぐり塚・福田海 2015.01.05

 

山と積み上げられた牛の鼻ぐり。

 

鼻ぐり塚・福田海 2015.01.05

 

40年以上も前に撮られた作品ですが、周囲の様子は劇中と然程変わらぬ様子でした。

 

鼻ぐり塚・福田海 2015.01.05

 

異様な空気が漂う塚の周辺。怖さと同時に人間のために命を捧げてくれた牛など家畜たちの悲しさも感じます。

 

鼻ぐり塚について

 

 かつてわが国の農村では、牛を飼い、田畑の耕作の労役等に使用していましや。牛は家族の一員のように大切に育てられました。その際、牛の鼻を穿ち、鼻輪(鼻環、鼻ぐり)をはめ、それに縄を結んで使役していました。やがて牛は飼い主の手をはなれて売りに出され、解体されて肉となり皮となりその最期を迎えます。牛はその一生のすべてを人間のために尽くしてきたといえましょう。

 こうした牛の大恩に報いるため、死後残された鼻輪(鼻環、鼻ぐり)を牛の唯一の形見として集めて浄祭することを福田海開祖中山通幽師が発願されたのであります。篤信の方々のお力により全国から鼻輪は収集され、現在もその事業は続いています。

 鼻ぐり塚はもと円墳であり、その墳丘上に鼻輪を積んでいます。石室内には真鍮製の鼻輪を溶かして作った阿弥陀の宝号を刻印した金属板が安置されています。また、正面には馬頭観世音菩薩を祀っています。昭和初年に塚が建立されて以来、現在までにおさめられた鼻輪の数は七百万を超え、現在も畜類供養のため、春、畜魂祭を行なっており、年間数万個の鼻輪が塚におさめられています。

 

以上、案内紙より全文転載。

 

焼き肉好きの方には、供養のため、年に一度は訪れていただきたい場所です。

 

◆施設概要

名称 宗教法人 福田海本部

所在地 岡山市北区吉備津795

電話 086-287-3008

駐車場 有

アクセス 

■自動車 岡山駅より約20分、山陽自動車道・岡山ICより約20分

■電車 JR吉備線・吉備津駅下車徒歩15分