国指定重要文化財「旧大社駅」― 駅舎外観・内部 ― | 山陰百貨店―日常を観光する―

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山陰山陽各所を訪れたご近所観光の個人的な備忘録です。

出雲に来たならば、この建物は絶対見ておくべきです。

 

国指定重要文化財「旧大社駅」

 

旧大社駅 2014.10.07

出雲大社前から島根県道161号(氷川出雲大社線)を南に約1.3km、左に首を振ると見える巨大な木造建築。
 
旧大社駅 2014.10.07

今から約22年前に廃線となったJR大社線の終着駅です。

出雲大社の門前駅に相応しい、和風で堂々とした佇まいです。

 

旧大社駅 2014.10.07

重要文化財 旧大社駅本屋 1棟

 

(平成16年7月6日指定)

附 棟札「大正12年12月8日 上棟式」

 

県指定有形文化財 旧大社駅鉄道施設 1構え

 

             旧大社駅鉄道敷地 14,671平方メートル

(平成9年3月28日指定)

 

 国鉄大社線は山陰線の支線として、明治45年(1912)に開通しましたが、そのときの駅舎は今の半分ほどの大きさでした。大正2年(1913)、出雲大社神苑から神門通りが貫通し、出雲大社から駅までを直結するルートができました。一方、国鉄山陰線は大正12年(1923)に京都から益田までが全通し、出雲大社への参拝者も爆発的に増え、駅舎も手狭になりました。そこで出雲大社の表玄関としてふさわしい建物へ改築しようと、同年9月に起工、12月に上棟式を行い、大正13年(1924)2月13日に竣工したのがこの駅舎です。

 

 建物のデザインは、駅舎全体に入母屋の大屋根を架けるなど、調和のとれた和風表現に特徴が見られます。中央待合室は屋根を高くし、高窓を設け、左右対称の美しい建物です。和風の外観に対し、構造は西洋風で、屋根裏の骨組には、部材を三角形に組み合わせたトラス構造を採用しています。

 駅舎は木造平屋瓦葺きで、柱などには台湾産などの桧が使われています。壁は漆喰仕上げですが、腰から下は縦板張りです。中央は、高い天上の三等待合室があり、照明器具や料金表、時刻表には趣があります。一・二等待合室に抜けている部分があるのは、ストーブの煙突の痕跡です。左手には事務室、その前面には皇族等の貴賓室としても使用された応接室が設けられています。大待合室中央に出札室があって、昔の切符売機、電話機なども置いてあります。その両側に木製の改札口があり、駅舎の南側には後に敷設された石製の団体改札口があります。

 駅舎には所々に造作の遊びご心が見え、屋根には亀の瓦がいくつか載っていますし、線路へ降りる鉄板にはウサギを見ることができます。

 この大社駅開業により、出雲大社への参拝客は増え続け、昭和35年(1960)には、1日2,000人を超える人が利用していました。しかし、その後は自動車の発達により乗降客が減少し、平成2年(1990)の大社線廃止により大社駅はその使命を終えることとなりました。

 

以上、案内板より全文転載。

 

案内板を熟読し踏まえた上で、まずはじっくりと外観を鑑賞。

 

黒い屋根瓦は特注のもので、一般のものより大きいものです。

 

旧大社駅 2014.10.07

木造建築の大敵は火。棟には「鴟尾(しび)」が乗っています。
 
旧大社駅 2014.10.07

正面中央には千鳥破風が取り付けられており、各破風には「懸魚(げぎょ)」が取り付けられています。
 
旧大社駅 2014.10.07

鴟尾や懸魚は、お城の天守閣に見られる「鯱鉾」、あるいは民家の母屋や土蔵の白壁になどに見られる「龍」や「水」の文字と同じ意味合いが込められています。それは「火難除け」。木造建築にとって一番の敵は「火」。このため、火の大敵である「水」を連想させるもの、つまり「魚」などを模したものをまじないとして建物の各所に取り付けたのです。

玄関中央の懸魚の上の瓦は国鉄マークである動輪の瓦があります。
 

旧大社駅 2014.10.07

 

また瓦の上には、亀の彫物が6個載っており、それぞれ少しずつ形が違っています。

 

旧大社駅 2014.10.07
旧大社駅 2014.10.07

「亀」といえば「兎」。ホームから線路へと下りる階段を目隠しする鉄板に、兎の模様が打ちこまれています。
 
旧大社駅 2014.10.07
旧大社駅 2014.10.07

どちらも和風の亀と兎ですが、その組み合わせはヴォーリズチックです。

玄関に戻り、まじまじと見上げてみると・・・
 
旧大社駅 2014.10.07

あっ!!

大好物の「ぐるぐる」!!
 
旧大社駅 2014.10.07

この蚊取り線香のようなぐるぐるは、旗竿を固定するためのものです。旧国鉄の建物だけあって、祝祭日には日章旗を掲げていたのでしょう。

このぐるぐるは、戦前から昭和40年代半ばごろまでに竣工した建物の正面玄関などでよく見かけます。しかし、実際に使用されているのを見たことがあるのは、日本橋三越本店だけです。日章旗を掲げることが悪いような風潮があるやに思います。非常に残念な話です。少し昔の話しですが、子供のころには多くの家庭でも、祝祭日には日章旗を玄関先に掲げていました。現在、祝祭日に日章旗を掲げる習慣があるのは、大手百貨店ぐらいでしょうか。

正面玄関より駅舎内へと足を踏み入れると・・・!!
 
旧大社駅 2014.10.07
旧大社駅 2014.10.07

2階吹き抜けの壮麗なコンコースが出現!!

待合室は正面向かって右手が二等待合室、中央の大きな一般待合室と二つあり、昭和初期までは分けて使用されていました。
 
旧大社駅 2014.10.07
旧大社駅 2014.10.07

高い天井を見上げると、当時のままと思われる大正風の灯篭型シャンデリアが見られます。
 
旧大社駅 2014.10.07

このシャンデリア同じデザインの灯具が、駅舎内外に合わせて30基取り付けられています。
 
旧大社駅 2014.10.07
旧大社駅 2014.10.07

明かりの灯った駅舎は趣き深く、より壮麗な姿になるのでしょうが、駅舎の開館時間は17時までです。夜間、ライトアップなどがされているかは未確認です。
 
旧大社駅 2014.10.07

玄関正面の出札室。
 
旧大社駅 2014.10.07

その窓口は、思わず手を合わせてしまいそうな神々しい重厚感を放っています。
 
旧大社駅 2014.10.07

その上に大きく設けられた高窓からは、神々しい光が差し込んでいました。
 
旧大社駅 2014.10.07

昔の改札口は板で覆われていますが、コンコース左奥、小さい出入口が解放されていますので、ホームへの出入りも可能です。

「ホーム編」は次回。

◆施設概要

名称=旧大社駅

所在地=島根県出雲市北荒木441-3(※竣工時は簸川郡大社町)

所属事業者=西日本旅客鉄道(※竣工時は国有鉄道)

所属路線=大社線

キロ程=7.5km(出雲市起点)

ホーム=2面3線

駅開業日=1912(明治四五)年6月1日

駅廃止日=1990(平成二)年4月1日

駅舎竣工日=1924(大正一三)年2月13日

構造=木造平屋瓦葺、トラス構造

開館時間=9時00分~17時00分

駐車場=有(※駅舎前には絶対に駐車しないでください)

アクセス=一畑電車「出雲大社前」から徒歩10~15分、JR「出雲市駅」から車約15分

問い合わせ=0853-53-2112(出雲観光協会)

備考=火災防止のため禁煙。

参考=建物正面が西向きですので、午後順光。上記写真の撮影日時は、10月7日午後3時ごろです。出雲大社参拝のお帰りに立ち寄られるとよいでしょう。