過日、TBS系で二夜に渡り放送されたスペシャルドラマ「LEADERS リーダーズ」

主役の佐藤浩一さん演じる愛知佐一郎の自宅および室内のロケが実施されたのは、奥出雲町大谷の絲原家住宅です。


(公財)絲原記念館 2014.04.08
(公財)絲原記念館 2014.04.08

 

絲原家は、たたら製鉄業で栄えた鉄師頭取。祖先は中世武家の一門で、江戸初期に備後国(広島県東部)より奥出雲の馬木村へと移住し帰農。同時にたたら吹き製鉄も開始しました。江戸の藩政期には、松江藩の五鉄師の一人として、鉄師頭取を務めています。同期には、全国の鉄のおよそ7割を松江藩が生産していました。

 

映画「もののけ姫」に登場した「たたら吹き製鉄」は、中央アジアの韃靼人(タタール人)が考案したといわれる製法で、砂鉄と木炭を粘土製の炉内で精錬し、銑鉄と鋼を得る古式製鉄法のことをいいます。

 

江戸後期、現在地にたたら工場と住居を移設。たたら工場1ヶ所、鍛冶屋2ヶ所経営し、明治初期の記録によると、たたらと鍛冶に携わる直接従業員517人、砂鉄採取などに携わる間接従業員880人を率いていたとあります。所有する土地は、仁多、大原、能義、意宇郡、5,000ヘクタールにも及び、鉄山、鉄穴山、山林、田畑を保持していました。

 

大正末期、洋式製鉄の普及に伴い、約280年間燃やし続けてきた紅炎は静かに尽きて以降、所有している広大な地所を活用し、家業を山林業へと転換します。

 

“絲原家住宅”について

 

 絲原家の母屋は、十代徳右衛門の植林した財を用いて十三代武太郎が本格的な書院造を志し、約五ヵ年の歳月を費やし、大正十三年(一九二四)に完成させたものです。設計は京都帝国大学の佐藤作造、大工棟梁は平田市の長谷川松太郎でした。建物の一階は中央に土間をとり、右側に事務所、左側と後方に客間及び住居部分を配し、前棟は一部二階、後棟は総二階造りで、付属建物を含んだ総建坪は約三五二坪(1,161平方メートル)、延床面積は約四九三坪(1,626平方メートル)、部屋数は約四十室あります。

 屋根は現在は瓦葺ですが、戦前までは栗そぎ葺きで、約三尺(91cm)の雪が三ヵ月積もったままでも建具の狂わぬ造りとなっております。そのため土間の梁・軒桁にも大きな材が使用されています。とくに大黒柱は一尺一寸角(33cm)のけやきの木を用いています。なお出雲地方では大工の棟梁が梁に水盛り線の数値を記すならわしがあり、当建物にも桁天よりの数値が記されています。

 また書院の欄間は、“八雲立つ・・・・”の古歌にちなみ、八つの雲形が象ってあります。

母屋書院と庭をはさんで相対する座敷は建築年代も古く、藩政期には松江藩主の御成り座敷としても使用された客殿です。

 

以上、案内書き看板転載

 

なお2004(平成一六)年に、国の登録有形文化財に指定されています。

 

(公財)絲原記念館 2014.04.08

 

愛知家での重要なシーンはセットではなく、実際に絲原邸で撮影されたものだということでした。

 

昨年12月に主役の佐藤浩市さんをはじめ、山口智子さん、宮沢りえさん、前田敦子さん、伊東四郎さん、橋詰功さん、中村橋之助さんら重要キャストが訪れ、4日間に及ぶロケが実施されました。

 

大戸口には、撮影時のスナップ写真などが展示されています。


(公財)絲原記念館 2014.04.08
(公財)絲原記念館 2014.04.08

 

ドラマと同じアングルで大戸口から見た書院。中央に見える螺鈿の座敷机も劇中に登場しています。


(公財)絲原記念館 2014.04.08

 

書院以下の三部屋は通常は客間として、正月・盆等には儀式の部屋として使用されています。その間取りは書院は10畳に床、二ノ間は10畳に床、三ノ間は12畳半となっていますが、書院のみは通常の1.25倍の畳を敷いています。

 

大戸口は絲原家の通常の出入口です。内部は約1mの積雪にも耐えるように、1尺1寸(約33cm)角のケヤキの大黒柱を中心に、巨大な松の梁と桁が二重三重に虹がけされています。また非常時には、多少の火も使用できるように吹き抜け構造となっています。

(公財)絲原記念館 2014.04.08
(公財)絲原記念館 2014.04.08

 

当地方では大工の棟梁によって、右手壁側の棟桁を基準として、各梁・桁間までの水盛線(水平と垂直が交わる長さ)が記されています。〔例:是本桁天より二尺四寸下水=この桁は本桁より約67cm下にあるの意〕

 

大戸口のとなりにも出入口・・・


(公財)絲原記念館 2014.04.08
(公財)絲原記念館 2014.04.08

 

こちらは、賓客専用の式台玄関です。
 

母屋書院棟と客殿棟の間には、江戸後期から明治中期にかけて築庭された三百六十坪(1,188平方メートル)の広さの池泉回遊式出雲流庭園があります。

(公財)絲原記念館 2014.04.08

 

庭内の母屋に隣接して、不昧流の茶室「為楽庵(いらくあん)」があります。


(公財)絲原記念館 2014.04.08
(公財)絲原記念館 2014.04.08

 

出雲地方は大名茶人松平不昧公を生んだ土地柄ゆえ、大変茶道の盛んなところで、絲原家の当主も代々お茶を嗜まれます。この「為楽庵」もこうした家人たちがお茶を楽しむ部屋です。

 

客殿は、江戸時代には藩主の本陣として使用され、明治以降は田能村直入や与謝野鉄幹・晶子夫妻の文人墨客や貴族院議長や内閣総理大臣を務めた近衛文麿などが訪れています。


(公財)絲原記念館 2014.04.08
(公財)絲原記念館 2014.04.08
(公財)絲原記念館 2014.04.08
(公財)絲原記念館 2014.04.08

 

客殿横の御成門は、江戸時代の松江藩主が領内を巡視の途次、絲原家を訪れた際に駕籠に乗り直接邸内に入るために使用された門です。また1936(昭和一一)年当時の貴族院議長(のちに内閣総理大臣)であった近衛文麿公が訪れた際にも開けられたということです。


(公財)絲原記念館 2014.04.08
(公財)絲原記念館 2014.04.08
(公財)絲原記念館 2014.04.08

 

身分の高い正客が訪れた際だけ開門されたということですが、ご覧のように開かれております。通ってよいのかどうか迷いましたが、遠慮しながら潜らせていただきました。

 

住宅前の道や流れる川も絲原家の敷地内です。


(公財)絲原記念館 2014.04.08

 

雨川を渡った黒門横に建つ絲原記念館の3つの展示室には、「たたら製鉄」や「有形民俗資料」、「美術工芸品」や「茶道具」などが展開されており、たいへん見応えのある展示構成になっています。個人的には、エントランスから展示室へ続く通路に掲示されている、歴代当主の肖像が一番興味深かった。

 

ふり返って山側の林間散策路「洗心乃路」は、いろいろな楓と種々の山野草に囲まれた散策路です。春の躑躅・山法師、夏の山紫陽花・笹百合、秋の紅葉など、四季折々の移ろいを楽しめます。訪れる季節は、秋がおすすめだと思われます。

 

◆施設概要

名称 公益財団法人絲原記念館

所在地 島根県仁多郡奥出雲町大谷856-18

TEL 0854-52-0151

FAX 0854-52-0159

開館時間 午前9時~午後5時(入館は午後4時迄)

休館日 展示替え日(年6日、3・6・9月に各3日)

入場料 大人1,000円・大学・高校生700円、中・小学生300円(「記念館」、「居宅・庭園」、「洗心の路」一括料金)

ホームページ 公益財団法人絲原記念館

アクセス 米子から国道432号安来経由で約90分。松江から県道24・25号大東経由約60分