大丸京都店の西側を南北に走る「東洞院通」は、その昔、日暮れになると輪入道が下町から山の方へ恐ろしい勢いでかけのぼったといわれています。

 

山陰百貨店―山陰ぐらし☆右往左往―-大丸京都店 2005.08.07
山陰百貨店―山陰ぐらし☆右往左往―-輪入道 2013.08.22

 

この通りを北へ四筋向上がった右角、京風に住所を申し上げると三条通東洞院東入ル、そこにそびえるネオルネッサンス様式、赤いレンガ造りの美しい建物が中京郵便局です。

山陰百貨店―山陰ぐらし☆右往左往―-中京郵便局 2010.08.22

 

1871(明治四)年に日本郵便制度発足時に、東京、大阪と共に設置された郵便役所の前身であり、日本で最も歴史のある郵便局のひとつとされています。

 

建設は1902(明治三五)年、設計が逓信省、施工は安藤組により新築されました。

 

1973(昭和四八)年に改築計画が発表され、翌1974(昭和四九)年には局舎の取り壊しが決定されました。しかし反対運動などもあり、ファサードを保存して内部を新築する手法を用いて改築されました。

 

この手法は、歴史的建造物の建替えや再現などを目的として、近年よく用いられる手法ですが、当局の改築がわが国最初の実例です。

 

そのような歴史的建造物があるこの一角は、昔から魔所とされ、都が遷される前から「霊」がいたと云われています。

 

昔はここに大きな松が生えており、あるとき、男が馬に乗って通りかかったところ、急に雷鳴がして雨が降ってきたので、馬から降りて松の木の陰に隠れた。とことが、雷が松に落ちて男も馬も死に、「霊」となってこの場所にすむようになってしまった。やがて都ができ、人が住むようになったが、「霊」は去らずに、その場所に暮らし、行き来する者にいたずらをするという。

 

非常に長くすみついている「霊」であり、いまでもときどき驚くほどオカシナコトが起こると云います。

 

便所の戸を開けると四つ目の鬼のようなモノがしゃがんでいてじろりと睨み、それを見た者が卒倒!!

 

その情景を描いたイラストはアニメ「ゲゲゲの鬼太郎」第3期のエンディングに流れていたので、トラウマになった方もいらっしゃるのではないでしょうか?

 

◆概要

名称:中京郵便局

所在地:京都市中京区三条通東洞院東入ル菱屋町30

アクセス:阪急京都線烏丸駅下車 徒歩約7分

 

なお三条通の並びに、同じ赤レンガ造の京都文化博物館別館(旧日本銀行京都支店)がありますので、おまちがえなきようご注意ください。


山陰百貨店―山陰ぐらし☆右往左往―-京都文化博物館 2009.12.06

 

こちらの設計は、辰野金吾とその弟子長野宇平治です。1906(明治三九)年に日本銀行京都支店として竣工。19世紀イギリスのクイーン・アン様式をもとに、辰野がアレンジしたフリークラシック様式です。クイーン・アン様式に比べ、塔やドームの多用が特徴的で、この意匠は「辰野式」と呼ばれています。

 

1965(昭和四〇)年に日銀京都支店は移転、1968(昭和四三)年には国の重要文化財に指定されました。

 

◆概要

名称:京都文化博物館別館

所在地:京都市中京区高倉通三条上ル東片町

アクセス:阪急京都線烏丸駅下車 徒歩約7分

 

◆参考資料

『今昔物語集』巻第二十七「三条東洞院通ノ鬼殿ノ霊ノ語第一」

『日本妖怪大全』 水木しげる 著 講談社 発行

『日本妖怪大事典』 水木しげる 画 村上健司 編著 角川書店 発行