カーブミラーの中に見えるのは・・・!?
米子専門大店ビル
記章の建築
米子専門大店ビルは大正14年頃に今の倉吉市出身の村岡猪造が経営する村岡産業が建てた鉄筋コンクリート造3階建ての、米子で最初の貸しビルだったという。旧米子銀行(現在は合併して山陰合同銀行)が借りていたこともあって、ビルの一番上の部分には米子銀行の記章が今でも残っている。
この建物は敷地形状に合わせて扇状に開き気味でファサード中央の壁面が湾曲している。玄関上部を楕円アーチにした曲がり額縁で飾られており、アーチの頂部には、くさび形の迫り石、要石がついている。離れて全体を見ると、ファサードは中央部の湾曲部を中心にシンメトリックな構成で、今なお威風を漂わせており、街角の気になる建物である。
建物の細部をよく見ると、パラペット下部の軒蛇腹めぐらされているのこぎり文様の歯飾りや頂部にかかげられた分銅紋の記章を支える幾何学風な渦巻き模様、そして柱形の頂部に見られる菱型のざらざらした浮き彫りなどに特徴があり、洋風建築を自己流に再生しようとする作者独特のデザイン手法がうかがわれる。
建物概要
名称:米子専門大店ビル
所在地:米子市道笑町1丁目111
建設年:大正14(1925)年
構造RC造3階建
設計者:原八十吉
以上、『とっとり建築探訪 県民の建物百選』より転載
建物をよ―――く観察してみると、ファサード頂部に見られる旧米子銀行の記章
その下や横にはのこぎり文様の歯飾りや幾何学風な渦巻き模様が見られます。
正面玄関アーチ頂部のくさび形のキーストーン
歴史を感じさせる佇まいですね。
ピラスターの上部に見られる菱型のざらざらした浮き彫り
正午ごろに訪れましたが、人の気配はまったくありませんでした。
通用口のシャッターも閉じたままでした。
2階には協同組合米子専門大店と有限会社大店新和会、3階には専門大店教養教室が入居、1階は空いているようです。
DCB側からの外観
増築を前提に建てられているようにも見えますが・・・
規模はちがいますが、阪神大震災で被災し解体された大阪北浜の旧三越大阪店や大丸神戸店インテリア館ル・スティルが営業中の神戸市中央区にある商船三井ビルのような雰囲気も感じます。
商船三井ビルジングの竣工は1922(大正一一)年ですから、米子専門大店ビルの竣工の方が少しだけあとですね。
◇参考文献
『とっとり建築探訪 県民の建物百選』 社団法人鳥取県建築士会 発行