水木しげるロードからアパートメントへの帰り道、花や木に包まれたお宅の足元で地味に咲いておりました。

黄水仙は、ギリシャ神話の中で、冥王ハーデスペルセポネーの出会いのエピソードで登場します。

 

山陰百貨店―山陰ぐらし☆右往左往―-黄水仙 2013.03.25


全知全能の神ゼウスと植物と豊穣の女神デーメーテールとの間に、ペルセポネーという美しい娘がいました。女神アフロディーテーは、その息子エロスに矢を射させ、冥王ハデスペルセポネーに恋をするよう仕向けます。ある日ペルセポネーニンフたちと花摘みに出かけ、冥王ハーデスペルセポネーの気持をひくために咲かせた1本の茎に100個もの花がついた水仙を見つけます。その水仙をペルセポネーが摘んだ瞬間に大地が割れ、4頭の黒馬が引く黄金色の馬車が現れ、それに乗った冥王ハーデスペルセポネーを地底冥府へと連れ去ってしまいます。その時ペルセポネーの手から落ちた水仙が、黄金色に変わり黄水仙が生まれたと云われています。

ハーデスポセイドンゼウスなどを弟に持つ兄に当たりますが、純粋、無垢で心優しく、女性の扱いには不慣れだったともされており、不審に思ったデーメーテールは、この誘拐劇にはペルセポネーを后に迎えたいと言ったハーデスを唆し拉致させたのは、父であるゼウスであることを知ります。ゼウスに対し猛抗議をしましたがゼウスは取り合いません。激怒したデーメーテールは天界の女神の地位を捨て地上に下ります。大地の豊穣を司る女神であるデーメーテールが地上に下ると大地は荒廃します。これに困った神々はデーメーテールを説得しますが 首を縦に振らず、ペルセポネーを帰すことを条件に天界へ復帰すると答えます。困り果てたゼウスヘルメスを冥府へ遣わし、これを受けハーデスペルセポネーを解放します。

ところがこの際、ハーデスの差し出したザクロの12粒のうち4粒(3粒もしくは6粒など諸説あり)をペルセポネーは口にします。これはペルセポネーが、冥府で丁重に扱われてきたことで情に絆されたとも、空腹に耐えかねたからだったとも云われています。冥府の食物を口にした者は冥府で暮らさなければならないという神々の取り決めがあり、またもやデーメーテール 無効を訴え猛抗議しますが、今度ばかりは神々の取り決めは覆すことができませんでした。そこでゼウスペルセポネーに対し、一年の3分の1を冥府で暮らし、3分の2を天界で暮らすとの裁定を下します。この裁定にデーメーテールは渋々従いますが、ペルセポネーが冥府に居る期間は豊穣をもたらさないこととし、不毛の季節である冬が生まれ、四季が発生した起源譚とされています。

このエピソードは、古代ギリシアで作られた『ホメーロス風賛歌』に収録されている『デーメーテール讃歌』に記載されているものです。地底冥府の食物を口にすると戻れなくなるという設定は、712(和銅五)年に編纂された『古事記』に記されている伊邪那岐伊邪那美黄泉國へと迎えに行き離縁する物語と同じですね。

 

山陰百貨店―山陰ぐらし☆右往左往―-黄泉比良坂・千引の石 2011.08.04


それにしても不思議に思うのは、時間や場所、言語をも超越して同じようなことを考えつくものなのかということです。でも、それは神のみぞ知るといったところでしょう。