赤い煉瓦風タイルが目をひく現在の米子市役所
瀟洒な外観そして、四角形がいっぱい
ファサードを構成する三本の柱
立法・行政・司法の三権分立、あるいは正義・友情・愛を表して・・・、いるかどうかはわかりませんまた、竣工年や構造などの概要は調べておりません
こちらは国道9号沿いに立つ旧米子市廰(現・山陰歴史館)
設計は佐藤功一・増戸憲雄、1930(昭和5)年完成、鉄筋コンクリート造3階建、山陰地区に残る数少ない大規模近代建築です。正面玄関を中心にしたシンメトリックな構成の古典主義的建築スタイルです。
当時主流だった大規模な庁舎建築は上から見ると「日」や「ロ」の形状が多い中、旧米子廰舎は、この写真右手に米子城外堀が流れていたため、地盤が軟弱であったことから、耐震対策などののため「L字型」の独特な形状で建設されました。
都市のランドマークとなる建築物に採られてきた垂直性の表現・ゴシック様式と都市の街並みを織りなす建築物に用いられてきた水平性の表現・ルネッサンス様式、相反するふたつの様式を破たんなくまとめ上げています。
1階部分が人造石を張ったルスティカ(荒い石積み)仕上げのボディウム(基壇)風の水平性の表現・ルネッサンス様式の要素、上階(2~3階)にはスクラッチタイル(レンガ風の硬質タイル)を張った壁面に均整のとれたピラスターにより垂直性の表現・ゴシック様式の要素、ルネッサンスにゴシックを融合させる巧みな配慮が成されています。
基壇部・胴部・頂部の三部構成がウイリアム・M・ヴォーリズ設計の百貨店建築の最高峰、大丸心斎橋店のような雰囲気にも見えなくもないかなぁ??
どうです、見えませんか?見えないか
ピラスターとは装飾用に壁に埋め込まれた付柱(つけばしら)のことで、通常は 柱頭飾りが施されるのが一般的でしたが、旧米子市廰舎では行われていません。
一般的なピラスターのスタイルは、高島屋大阪店の入居する南海ビルディングのファサードに見られます。
正面玄関口の真下から見上げる
壺飾りを冠した、コリンシャンオーダー(コリント式)のピラスター柱頭部
壮麗な雰囲気を醸し出しています。
山陰歴史館の玄関ピロティ上部正面には「米子市廰」の文字が残されています。
この「廰」という文字は「聴く」ということで、市民の訴えや意見を聴く場所という意味合いが込められています。
当館の設計者である佐藤功一の代表的な建築としては、重要文化財に指定されている早稲田大学大隈記念講堂が有名です。
その他にも
日比谷公会堂【1929(昭和四)年完成】・千代田区日比谷公園
市制會舘【1929(昭和四)年完成】・千代田区日比谷公園
旧群馬県庁(現・群馬県庁昭和館)【1928(昭和三)年完成】・群馬県前橋市
群馬会館【1930(昭和5)年完成】・群馬県前橋市
などがあります。
旧米子市廰の外観は群馬会館が一番近いね
山陰歴史館(旧米子市廰舎) 概要
所在地:鳥取県米子市中町20
設計:佐藤功一・増戸憲雄
施工:鴻池組
竣工:1930(昭和五)年7月1日
構造:RC造
階数:地上3階・塔屋付
建築面積: 706.678平方メートル
延床面積:2074.438平方メートル
総工費:21.5万円
◇参考文献
「旧米子市庁舎」
米子工業高等専門学校建築学科 藤木研究室 藤木竜也 作成
米子工業高等専門学校 名誉教授 和田嘉宥 監修
『とっとり建築探訪 県民の建物百選』 社団法人鳥取県建築士会 発行
『ヴォーリズの建築』 山形政昭 著 創元社 発行
『近代名建築浪花写真館』 福島明博 著 日本機関紙出版センター 発行