昨日の記事で大丸新長田店が営業を終了し閉店することをUPしましたが、広島県のそごう呉店も昨日19時を以て営業を終了し閉店しました。
1987年9月26日に現地法人として資本金1億円で会社設立された株式会社呉そごうは、1990年3月18日に呉市交通局庁舎跡地に建設された呉駅前西地区再開発ビルにグループ27番目の店舗として開店しました。売場面積21,365平方メートル、オープン時のキャッチフレーズは「呉ではじめての、都市型本格派百貨店」、地方都市に於いてそごうができるということが、イコールおらがまちが都会になるといった高揚感で包まれていたことがわかります。開店はまさに日本中がバブル景気に沸いていた時期ですね。当時のそごうは地方都市の再開発計画にダボハゼのように食いつき、ゲーム感覚でお店を建てまくり、野放図な拡大政策を図っていました。
2000年7月12日にそごう(東京・大阪・神戸)とグループ21社が民事再生法(うち9社はのちに民事再生手続きを廃止し破産宣告)を申請しました。株式会社呉そごうの負債は単体で236億円、自己破産や特別清算を含めたグループの負債は単純合計でおよそ3兆円という空前絶後の倒産劇となりました。しかし十数年も前の出来事であり、その記憶も風化しつつあります。
2011年2月5日に出張で訪れた際、数年のうちに閉店されるであろうことが予想されましたので、大和ミュージアムやてつのくじら館よりも優先して一番に向かいました(笑)
宿に到着したのが夕方近くとなってしまったため、西日を浴びる外観を撮る事になりました。斜陽思わせる少し寂しい絵面になってしまいましたが、今思うとそれでよかったのかもしれません。
店舗の外観を鑑賞してみると、いたるところにそごう建築ともいえる特徴が見受けられます。
窓がほとんど見られず、コーナーや上層階を廻る窓
やたらと大きいロゴ
おおっ!!
それぞれにカラーがちがいますね!!
旧そごう時代の赤、旧そごう時代末期の90年代終期に見られた翡翠、経営破たん後のミレニアムリテイリング傘下となった時代に見られたミレニアムブルーのサインが一堂に会するこれはまるでそごう史料館♪
そごうのコーポレートカラーは赤→紺→金・翡翠、民事再生後には赤→青というような変遷を遂げています。
歩道橋が錆だらけで作りっぱなし感が炸裂!!
歩道橋を渡ってそごうへGOGO!!
それにしても土曜日の夕方だというのに、人が少ない!!
この虚無的ともいえる壁面の空白がまちがいなくそごう建築です。
JR呉駅側からそごう呉店を見上げてみる
こちらから見るとあまり奥行きがないことに気づきます。店舗の形状はL字型をしており正面や大通り側からだと大きく見えるのです。
それにしても巨大なロゴですね。
ペデストリアンデッキ(公共歩廊)でJR呉駅と結ばれています。
贅沢なスペースの取り方ですが、それがかえって閑散とした雰囲気を醸し出してしまうのが皮肉なことです。そして、どこが正面玄関なのかが分かり難いのもそごう建築の特徴です。
この赤系の大理石がそごうの代名詞
まるちきりの社章とSOGOのロゴ
イッツ・ア・スモールワールド時計
正時5分前になるとオルゴールの音色と共に世界のからくり人形が登場し、「小さな世界」を演奏していました。これは東京ディズニーランドのアトラクションイッツ・アスモールワールドのスポンサーであったためにそごうの一部店舗に設置されていたもので、およそ1基1億円といわれていました。しかし、2008年4月15日で老朽化を理由に運用が中止されました。これは同日を以ってスポンサー契約が終了したためであり、奇しくも東京ディズニーランド開園25周年の日でした。世界のからくり人形たちの演奏を楽しみにしていた子供たちのために「おにんぎょうさんたちは、おやくそくがあって、おうちにかえることになりました。」とすべてひらがなでの告知が、一般の告知と共に掲示されました。なお時計の周辺あったイッツ・ア・スモールワールド関連の掲示物や時計に記されていたTokyoDisneylandのロゴも消去されています。
店内へと入ってみましたが、土曜の夕方とは思えないほどの閑散とした状況でした。2008年9月8日、駅を挟んで反対側にオープンしたゆめタウン呉などに客足を奪われ、93年2月期には212億円あった売上が11年2月期には89億円まで落ち込んでいました。2008年にはそごう広島店へ後方機能や外商部門が統合されて同店の分店化されていましたので、いずれ撤退ということが予想されていたはずです。セブン&アイHD傘下となり、同社の下で不採算店の徹底したスクラップが図られている状況を考えれば、遠くない時期に撤退することは予想できたでしょう。
閉店の報道に呉市の担当者が「撤退は青天の霹靂」とコメントを出していたようですが、本当に知らなかったのであればそちらのほうが大問題。また埋め立て地にようやく新たな企業が進出し、道路網が整備されることとなったことを上げ「いい流れをつかみかけていたのに」と嘆いてみたり、会見で記者からの質問に市長が「市の責任ですか」と気色ばむ場面があったりと、撤退が決まってから大慌てするといった衰退する地方都市にありがちな世情から隔絶されているかの如き情報力の無さやスピード感の無さ、現状認識の甘さというよりも無さが露呈した一幕でもありました。
底地の8割は市が所有し上物はそごうと市の共同保有ということですが、今年5月の契約が切れるとおよそ賃借料1億円分の歳入に穴が開くことになり、市の財政への影響も避けられない状況のようです。
日が暮れるのを待って再度出撃!!
三色のネオンサインがそごう激動の歴史を物語っているようです。
闇雲な豪華さを追い求めた狂乱バブルの時代を彷彿とさせる遺跡ともいうべきでしょうか。
閉店時間を過ぎるとすぐにネオンの灯りが落とされました。
看板やロゴを外しても、この巨大な箱がそごうであったことが分かるはずです。それにしても、これだけの店舗面積を埋めるとなると、後継テナントの決定には相当な困難が予想されます。千葉県の木更津そごうや茂原そごうの跡には後継に名乗りを上げた企業がありましたが、そごう営業時の華やかさを取り戻すに至っていません。市域内においては広い無料駐車場を備えた郊外のSCなどへと流れ、大きな買い物は整備された道路網を使ってより大きな都市へと出かけて消費するストロー現象が発生している車社会となってしまった地方都市において駅前は必ずしも一等地ではないという現実があります。
JR呉駅前で一際威容を誇る呉阪急ホテル
その向こうに見えるそごう呉店パーキングビル
JR呉駅を挟んだ反対側のゆめタウン呉
大和ミュージアムはこの正面にあります。
ゆめタウン呉のとなりには巨大な潜水艦は「てつのくじら館(海上自衛隊呉史料館)」
見上げるうちに後ろへひっくり返ってしまうほどデカい!!
そして呉を訪れたなら、ここに行かなくては訪れた意味がありません。
大和ミュージアム(呉市海事科学博物館)
時間の都合で売店でおみやげや記念品の物色をしただけで終わってしまいましたが、ここは再度訪れてみたい場所です。洗練された立ち居振る舞いの案内係のお姉さま方は必見ですぞ!!(←そこかよ!!)
いえいえ、何時間もかけてじっくり見なければならないほど充実した施設であることはまちがいありません。
広島県呉市は、古くは村上水軍が根城とし、近代以降は帝國海軍、海上自衛隊の基地となっています。神奈川県の横須賀市や長崎県長崎市のような雰囲気を感じました。戦艦大和が造られたまちであり、現在でも造船、鉄鋼、機械、金属などのいわゆる重厚長大産業の占める割合が高いようです。地図を片手に1時間ほどまちあるきをしてみましたが、「軍港のまち」あるいは「海軍のまち」の情緒を感じさせるエッセンスがあちらこちらにありますが、敢えてそれを売りにしていないのかそのような表示は目に入りませんでした。
また、観光客に歩いてみようと思わせる案内表示などが目に入らず、駅からどちらの方へ進めば何があるのかが分からないですね。見える範囲で商店街がどこにあるのかや港がどこにあるのか、ミュージアム施設がどこにあるかがわからなかった・・・。
と思ったら!!海軍さんの珈琲
駅前かられんが通り(商店街)入口まで約5~600m、ここが旧市街地になるのでしょうか。駅前に比べて人の密度が濃いように感じました。
れんが通りを沿いにはこのような彫刻も並んでいます。
謎のオブジェ?ベンチ?
オープンカフェ?
広島を地盤とする地方百貨店福屋の呉分店
この先に長いアーケード商店街は続いています。
時間がないので大和ミュージアムを目指してふり返りGO!!
本通沿いで大好物ピラスター発見!!
中国銀行呉支店です。
なんだこれ!!目を惹いた建物
大砲屋さんではありません。薬局屋さんです。
だるま妖怪が出没しそうな古めかしいビル太陽家具百貨店呉店。
JR呉線の高架が走るめがね橋交差点。
その先左手にある広島県隊友会呉市部。
この左手一帯が入船山公園。
右には煉瓦造りの高い塀が延々と続く海上自衛隊の施設。
時刻は薄暗くなった暮れ時、行き交う人はほとんどなく軍靴の響きが聞こえるような不安感に襲われました。
高い塀の切れ目を右折し、海上自衛隊の施設の間を抜けると、県中央桟橋ターミナルや大和ミュージアム前につながっています。
この港から広島本土や四国松山、瀬戸内の島嶼部へとフェリーが発着しています。
大和ミュージアムの海側にはこのようなアート作品が点在しており、ひとりはしゃいでしまった中年の不審者です(笑)
JR呉駅にはスーパーや各種専門店、レストラン街などがあり都会的な雰囲気を漂わせつつ、地域の事情に合わせた構成の充実した駅ビルです。
言っちゃなんですがこういった地方都市では中途半端な品揃えや価格構成の百貨店ではなく、SCやこういった都会的なセンスの駅ビルでデイリーユースを拾っていかなければ立ち行かないでしょうね。
まちなかの散策は継接ぎの時間を合わせて2~3時間ほどだったでしょうか。もっと時間があれば、具(つぶさ)にまちなかを見て歩き、高台から市街地や軍港を眺めてみたり、各ミュージアムを堪能したりと歩き倒し甲斐のあるまちに感じるんですよね。
◇データー
そごう呉店(2013年1月31日閉店)
広島県呉市中央1-1-1
TEL0823-27-2111
売場=1F~7F・RF
売場面積=21,395平方メートル
年商=89億円(2011年度)