火事ですか?救急ですか?

 

はじめて掛けた119の応答はなんとなく冷たく感じた。

 

救急に、なると、、思い、、、ます。

息も絶え絶えそう言えた途端、

心臓の鼓動が更に激しくなり、冷や汗が額に沸き、両手が痺れ、呼吸の乱れが強くなり、強烈な死ぬかもしれないという恐怖感に襲われ、意識が遠のく感じがした。

 

もしもし?

聞こえますか?

話せますか?

どんな症状出てます?

ご住所言えますか?

お名前は?

お歳は何歳ですか?

電話の向こうから聞こえる声が頭に入って来ない。

聞かれてる質問に答えられない。

声にならない、話せない、伝えられない。

 

名前は言えた。

住所は言えたのかな?

年齢は答えたっけ?

症状は、、、

記憶がない。

今そちらに救急車向かってますからね。

玄関の鍵開けて待ってて下さいね。

 

遠い。

いつもはすぐそこに玄関あるのに。

財布と携帯掴んで、

数メートル先の玄関まで床に這いつくばりながら必死に辿り着いた。

 

息が出来ない。

正確に言えば、呼吸は辛うじて出来ている。

空気が少ししか吸えない。

少ししか吐き出せない。

だから焦って吸ったり吐いたりの速度が速くなる。

そしてそれに付随して胸の鼓動も大きく速くなる。

口に小さな風船が張り付いていて、

その小さな容積の中の空気でやりくりしてる様な感覚。

脳に危険信号が点滅している。

早く、助けて。

 

携帯が鳴った。

救急車の音が聞こえる。

救急隊の人が話してる。

玄関の鍵開いてますか?

もう到着しますからね。

 

その声を最後に意識朦朧となり気絶した。