【第11回 劉皇叔 北海に孔融を救い 呂布  濮陽で曹操を破る】


~その11~(通算114回)
『戦慄の呂布軍』



曹操が呂布に指を突きつけ、
「呂布!私はお前から恨まれる覚えはない!なのに、なぜ我が領土を奪う!」
と言えば、呂布も、
「笑止!誰が取ろうと漢の城は漢の城だ!貴様に独占する権利はない!」
と返す。
曹操がさらに、
「公台!公台はどこだ!?」
と問えば、陳宮が馬を進めて名乗り出た、
「ここだ孟徳!」
「公台!・・・・・・公台・・・・・・」
曹操は、もうそれ以上は何も言葉が出てこなかった。
かつて自分の命を救ってくれ、そして天下を安んじようとの志と苦楽を共にした仲間であり、親友。


・・・もう・・・戦うしかないのだ。


陳宮は言った、
「孟徳!お前が死ぬか私が死ぬか、そろそろ決めようではないか!」
「(本当にそれしか道はないのか・・・!?)」
曹操は手綱をぎゅっと握りしめ、何か言葉を返そうとするが、何も出てこない・・・。
陳宮は、少しだけ天を仰ぎ見ると、静かに馬首を返して自陣に戻り、呂布に開戦するべしと告げた。


「臧覇!曹操の首を取ってまいれ!」
呂布が命じた。
「おおおおっ!」
臧覇は天に届かんばかりの雄たけびを上げながら、大斧をひっさげて馬を飛ばし、曹操目掛けて突き進んだ。
すると曹操の陣中から楽進が飛び出し、薙刀を振るって迎え撃つ。
両将、馬を馳せたがえ、激しく武器をぶつけ合う。
「驚いた。その小さな体躯でよく俺とやり合える。名は何と言う!?」
「我は楽進。俺を倒せぬようでは、我が君の首には到底届かぬぞ」
「言ってくれる!」
打ち合うこと30余合。
両将譲らず勝負は見えない。

そこへ夏侯惇が、
「ええい楽進!もたもたするなら、一番首は俺がもらうぞ!」
と馬を飛ばして楽進の加勢に加り、それを見た張遼が臧覇の加勢に加わる。
「余計なことを」
楽進と臧覇が同時に言った。


夏侯惇の鋭い槍と張遼の薙刀が火花を散らす。
やがて4将が入り乱れ、戦いは激しさを増す。


すると、それを見ていた呂布がぼそりと言う、
「面倒な。俺が終わらせてくれる」
そして方天画戟を片手に赤兎馬を飛ばして突っ込んだ。
瞬間、
「引けっ!」
と曹操の声が響き渡り、夏侯惇と楽進は馬首を返して自陣へと引き返す。
「くだらぬ。逃げるくらいなら出てくるな」
呂布はそのまま単騎で突入し、曹操陣営の防衛線を蹴散らしていく。
張遼・臧覇もそれに続いて敵陣に突入して暴れまわり、さらに陳宮が全軍に攻撃を命じた。
「ようやく出番か。もう俺たちの獲物は残っちゃいねえんじゃねえか?」
魏続が笑いながら言った。
「馬上で笑って舌を噛むなよ」
と宋憲。
「2人ともそこまでだ。行くぞ、続け!」
高順が檄を発して馬を飛ばし、全軍が曹操陣営に突撃を開始する。


呂布によって陣形を大いに乱された曹操軍は、さらに受けた全軍の総攻撃によって崩れに崩れ、一気に40里も退いた。


ほんのわずかの間の出来事だった。
たった一騎で戦局を変えてしまう呂布。
そしてその軍も恐るべき強さ。
曹操とその将兵たちは、呂布軍の強さに戦慄を覚えた。




          次回へつづく。。。