【第11回 劉皇叔 北海に孔融を救い 呂布  濮陽で曹操を破る】


~その6~(通算109回)
『劉備、徐州に入る』



孔融が軍を率いて徐州に出立したころ、劉備は北海郡を離れて北平にいる公孫瓚(コウソンサン)の元を訪ね、徐州を救おうとする次第をつぶさに語った。
「お前と曹操の間に何か恨みがあるわけでもなし。わざわざ他人のために苦労をする必要もあるまいに」
「しかし、いったん行くと約束した以上は、信義にもとるまねは出来ません」
公孫サンは劉備の決意を知ると、
「そうか。お前は昔から、1度決めた事は譲らん男だしな。分かった。ならば、我が軍の歩騎2000をお前に貸そう」
と兵を預けることにした。
劉備は公孫瓚(コウソンサン)に礼を述べると、さらに拝謝して、
「出来れば、趙子龍をお貸しいただきたく」
と、かつて袁紹軍と対峙した折り、獅子奮迅の活躍を見せた趙雲も借りたいと願い出た。
「趙雲は我が軍に欠かせぬ武将だが、今は緊急の事態ゆえ、それも許可しよう」
と公孫サンはこれも承知した。


趙雲は劉備の前に出て再会の挨拶をすると、自慢の槍をひっさげ、さっそく出陣の準備に取り掛かった。
こうして劉備は、関羽・張飛とともに手勢3000を率いて先陣に立ち、趙雲は2000を率いてそれに続き、徐州へと向かった。


さて、徐州に戻った糜竺が、孔融が劉備の加勢まで頼んでくれた旨を報告し、陳登も青州の田楷が快く加勢に向かってくれたことを報告したので、陶謙の心はようやく落ち着いた。


ちょうどその頃、孔融・田楷の両軍は、曹操軍の勇猛さに恐れをなし、遥か離れた山麓に陣を構え、進むのを躊躇していた。
曹操もまた、敵側に加勢が到着したのを見て、前後に軍勢を分け、むやみに城攻めにかかろうとはしない。


そんな膠着状態の中、劉備の軍も到着し、孔融に対面した。
孔融が言う、
「曹操の軍勢は多く、しかも用兵にもたけているから、軽々しく戦うべきではない。ここは、しばらく奴の動静を見てみようではないか」
劉備は答えた、
「しかし、徐州の兵糧はもう少なくなっている頃で、とても長くは持ちこたえられないでしょう。そこで、関羽と趙雲に兵4000を与えて孔融様のもとに控えさせておき、私は張飛とともに曹操の陣中を斬り抜けて徐州へ入り、陶謙殿と話をして参りましょう」
孔融は大いに喜び、田楷と連絡の上、手勢を曹操軍の左右に配備し、関羽・趙雲は兵を率いて双方の急に備える事とした。


この日、劉備・張飛は騎兵1000を率い、決死の覚悟で城を目指して突き進んだ。
そこへ、陣太鼓の音とともに、屈強な騎兵歩兵を率いた曹操軍の大将于禁(ウキン)が現れ、
「貴様ら何者だ!どこへ行く!?」
と叫ぶ。
これを見た張飛は物も言わずに打ってかかる。
両馬渡り合うこと数合するとき、劉備が雌雄一対の剣を振るい、兵に下知してどっと攻めかかれば、于禁はたまらず敗走し、劉備たちは一気に徐州の城下まで馳せつけた。
城内では、赤地に白で『平原劉玄徳』と大書した旗を望み見、陶謙が急いで門を開かせる。


劉備たちが入城すると、陶謙は大喜びで迎え入れ、ともども役所へ入った。
陶謙はすぐさま宴席を用意し、劉備たちを労おうとしたが、
「今は曹操軍が城下に迫り、城内の兵糧も満足ではないはずです。このようなもてなしをお受けするわけには参りません。そのお気持ちだけで十分です」
とこれを断った。
陶謙はこれを聞くと、劉備の人柄を大いに気に入り、あらためて礼を言うと、これまでのいきさつや今後の対策を語り合った。

話をするうちに、劉備の人品・志をますます気に入った陶謙は、糜竺に命じて「徐州の牧の印」を持って来させ、
「劉備殿、どうかわしに代わって、この徐州をお引き受けくだされ」
とこれを譲ろうとした。
「こ、これは、いったい何事でございますか!?」
と劉備は突然のことに驚愕した。



          次回へつづく。。。