今回7回目は生のお肉あるいは生焼けのお肉についてです。
「生のお肉を食べてしまったのですが大丈夫ですか?」「料理の中に生焼けのお肉が入っていたのを食べてしまったのですが大丈夫ですか?」夏休みシーズンを過ぎ、バーベキューを行う機会が減ってきたのか、最近でこそ若干減りましたが、焼き肉は日本の食文化でもあり今なお根強く聞かれる質問です。
妊娠前からトキソプラズマの抗体を持っている人は大丈夫なのでしょうが、妊娠前あるいは妊娠初期にトキソプラズマ抗体が陰性であった場合が問題となりますね。
気にしない人はよいのですが、食べてしまってから大丈夫だったのかと思うのであれば、食べる前に気をつけていく習慣をつけるしかないですね。これは妊婦さんの自覚の問題であります。食べてしまったお肉が生だったとか生焼けだったとかで、後から大丈夫かと聞かれても何ともいえないのが実情です。俗に言う後の祭りです。
ところで、妊娠中に生肉あるいは生焼けの肉を食べて問題となり得るのはトキソプラズマ感染がメインでしょう。
トキソプラズマは哺乳類と鳥類に感染する単細胞の寄生虫です。肉眼では見えない大きさで、卵はネコ科動物の腸管の中でのみ作らます。感染したネコのフンに触ったり、土いじりしたりすることで、人に感染するとされています。しかし、最近では、感染した動物の生肉を食べて感染する危険性も指摘されています。
ある調査によると食肉用の牛の6.5%、豚の5.2%がトキソプラズマの抗体検査で陽性だったということです。トキソプラズマは65℃以上で加熱しなければ死にません。表面が焼けた肉でも、中まで火が通らないと死滅していない危険性があるのです。ただし、感染しても健康な人なら、自覚症状がないほど軽症ですむので感染したことが分からない可能性もあります。日本人の2~3割はすでに感染し抗体を持っているとされています。
理想的には妊娠の直前なのですが、実質的にはそれは無理なので妊娠初期にトキソプラズマの抗体検査をしっかり行い、抗体検査で陰性だった妊婦さんにこそ、生肉を食べたり土いじりをしたりするリスクを伝えて行くことが大切です。
全国で年間約500が妊娠中にトキソプラズマに感染し、母子感染はそのうち3割で、障害児として生まれる子は10人程度と推測されています。トキソプラズマ抗体の検査は施設により若干の違いはあれ1000円程度で実施できます。頻度が低いからといって検査しないのではなく、妊娠初期にしっかりと検査し、結果に応じた注意を喚起していくことが大切になります。


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