前置胎盤の診断は超音波検査で比較的容易にできます。ただし、経腹超音波での正診率は約95%ですが、経膣超音波での正診率は約99%であり、診断には経膣超音波を用いることが望ましいとされています。
妊娠中期(妊娠14~28週)に超音波検査により胎盤の付着部位を確認し前置胎盤の有無を確認することが必要です。この際に前置胎盤が否定されれば、以後も前置胎盤の可能性はなくなります。しかし、この期間に前置胎盤が確認されたとしても最終診断では前置胎盤でなくなる例が多いです。この期間での前置胎盤の有無の確認は将来的に前置胎盤となるリスクがあるかどうかの振り分け程度に考えてよいと思われます。つまり前置胎盤としてのフォローアップが必要かどうかの振り分けです。
これは妊娠が進むにつれて子宮の増大や子宮下節の延長に伴い、内子宮口と胎盤辺縁の位置関係が変化することがあるからです。これを左の図で示すようにplacental migrationと呼んでいます。
実際、妊娠15~19週・妊娠20~23週・妊娠24~27週・妊娠28~31週・妊娠32~35週の各期間に前置胎盤と診断された症例中、最終的に前置胎盤と診断された症例はそれぞれ12%・34%・49%・62%・73%といわれています。つまり、妊娠早期に前置胎盤と診断された症例ほど最終的には前置胎盤ではなくなる例が多いのです。
しかし、妊娠30週以降に全前置胎盤と診断された症例は最終診断が変わらない例が多いことも事実です。したがって、妊娠30~32週で前置胎盤の診断をすることが妥当であると考えられています。
なお、本文はオリジナルのものですが、画像中に使用しているイラストの一部は“病気がみえるシリーズvol.10の産科”から引用しております。
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