切迫流産の治療 | 産婦人科専門医・周産期専門医からのメッセージ

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 第一線で働く産婦人科専門医・周産期専門医(母体・胎児)からのメッセージというモチーフのもと、専門家の視点で、妊娠・出産・不妊症に関する話題や情報を提供しています。女性の健康管理・病気に関する話題も併せて提供していきます。

 切迫流産の治療法です。

 残念ながら妊娠12週未満の切迫流産に対して有効な治療法は現在のところ知られていません。安静療法や薬物療法が考慮されますが、いずれも有効性は証明されていません。

 薬物療法ではピペリドレート塩酸塩(ダクチル®)、プロゲステロン注射剤hCG注射剤が保険適応があり投与が考慮されます。ただ、いずれも有効性は証明されていません。止血効果を期待してトラネキサム酸(トランサミン®)やカルバゾクロムスルホン酸ナトリウム水和物(アドナ®)を投与される場合もありますが、保険適応がありません。トラネキサム酸(トランサミン®)にいたっては血栓症のリスクすらあり得ます。

 したがって切迫流産に対する薬物療法は、あくまで「気は心程度」のものでしかないと認識しておく必要があるのではないでしょうか。

 安静療法についても同じです。安静にしていることで流産が予防できるという有効性は証明されていません。ただし、絨毛膜下血腫といって子宮内かつ卵膜外に出血が起こり血腫が出来ている場合には流産予防の効果がある可能性も示唆されています。つまり、切迫流産だから安静に、といっても絨毛膜下血腫の有無でその必要性や有効性が異なってくるのです。

 妊娠中の女性が出血したり腹痛が起こったりすると、休日や時間外でも医療機関を受診するケースがみられます。ところで、こうした受診は本当に必要なのでしょうか?出血や腹痛が軽度の場合、時間外に受診することの必要性は乏しいといえます。翌日ないし予定された受診日の受診で問題ありません。もちろん出血や腹痛が軽度でなければ受診して問題ないと思われます。ただし、切迫流産に対しての有効な治療法がない現状では、受診したからといって妊娠の予後は変わらないといえます。また、出血や腹痛が軽度という、軽度の定義のあいまいですので、心配であれば受診するというスタンスで悪くないと思います。受診することで精神的に安心できる効果はあるでしょう。この点については私自身のみの意見ではなく、産婦人科診療ガイドライン2011産科編にも記載される予定です。

 これまでの内容はあくまで妊娠12週未満の切迫流産に対してです。妊娠12週以降では切迫早産に対してと同じような対応になり上記は当てはまりません。その点は注意してください。

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