小雨の降るお昼過ぎ


買い物に出かけた


なんか、つまらない

私が何をしたって言うの

小言ばっかり言われて

悪いのは全部私なのか

食事を持って来るのが遅いとか

いつも一緒に食べられないとか

此の家の人間はおかしいとか


言いたくなる気持ちはわかるけど

言われる私は立場が無い

なんか言い返すと

お前のせいでこうなったんだ――みたいな






もう笑っちゃう

キリがないから

買い物理由に外に出てやった





ムクドリと目が合った


ムクドリっていつも番いで居るんだよね


割と近くで


ああーーー

携帯持ってくればよかった

デジカメでも・・・



ムクドリは飛び去った

樹木の上にキジバトが居た

あれは結構のんき者だから

シャッターチャンスはいくらでもあるような気がする


まぁ、カメラ持ってたらの話

今日は薄暗いし

おまけに敵はシルエットだ

素人の私に、狙える訳が無い



スーパーの中は

雨のせいもあってか

少し空いていた


通用口の傍に見切り品のバナナが積まれている

悪くない

物色してみる

まだ行けそうなのゲットぉ~~

おおっとぉ~~四本八十円の見切り品のバナナァ~

私の事が嫌いなのかなぁ~~

するりと手から落ちて床に着地ィ~~(笑)




「生きてますね」



「ええっ」



思わず前を見ると

私と同じくらいの背丈で小太りのおじさんが

にこにこしながらこちらを見て居る


ははは・・・

見られたか・・・


すかさず私も、やんちゃなバナナ君を拾い上げ

「はいっ。まだ生きが良いです」


おじさんは、恵比寿顔で笑った

気が付くと私も

口角がきゅっと上がって

にこにこ顔になっていたんだ


なんだか・・・

さっきまで仏頂面が嘘みたい


きっとバナナを選んでいた時の私の顔は

とんでもなく不幸顔で

眉間に皺なんか寄せて居たのかもしれない


おじさんは何処かへ行ってしまった

恵比寿様だったりして




行きと帰りとじゃ気分も全然違う

両手は重かったが

気持ちは軽かった


なんであんなに嫌な気分になったのだろう

もう理由なんか忘れてしまった

「只今」とドアを開けると

「お帰り」と返事が来た


「ほら、生きてるバナナだよ」

少し痛んだバナナを袋から出して見せてみる

「なにそれ」


空気がにーーっとなめらかになった



ペタしてね