日本映画専門チャンネルの「蔵出し名画座」を朝、チョロチョロ見ていた。

今日かかっていたのは、「サラリーマン目白三平 亭主のため息の巻」。

笠智衆が、国鉄の広報部門に24年勤続するサラリーマン役で登場。
東宝の1960年製作なので、伊藤久哉、田島義文、夏木順平等、ゴジラ映画、社長シリーズの常連脇役さんが次々と現れる。
水野久美、浜美枝、団令子等、東宝美人女優の皆さんが、全く化粧っ気のないお姿での出演なのでちょっと驚かされる。

大御所は、左卜全、松村達雄、賀原夏子あたりか。

そして、笠智衆さん。
この人が出てくると、周りの俳優さんが全て東宝専属の皆さんでも、松竹の世界になってしまう。
宇野重吉御大が「あれは、盆栽の松だ。演技で勝とうなんて思うな。」といった意味も分かる。

この「サラリーマン目白三平」について調べてみた。
旧制松本中学を卒業後、1926年に国鉄東京鉄道局に就職。
国鉄の広報部に勤めていたのだそうだ。
この映画の主人公・目白三平氏の国鉄広報部に勤めている。
しかし、サラリーマンの悲哀(安月給を嘆く、嫌な宴会には出ねばならぬ、無理難題を押し付けられる等々)の舞台が、自分たちの職場であると公表するのは、さばけているというか、あまり良く分からなかったのか。
「阿房列車」の内田百閒先生にも心酔していた人なのだそうだ。

しかしながら、時代とは残酷である。
たぶん、当時の同世代の勤め人、生活者の悲哀を描いた大衆小説とその作家は、見事に後世には伝わっていないのである。

そんな歴史の悲哀も感じながら、笠智衆さんの存在感を確認しつつ、チョロチョロ見ていたのである。