山本周五郎の小説「季節のない街」を原作にした宮藤官九郎脚本のドラマ。

今回は第四話。
原作の「牧歌調」「とうちゃん」を使っている。
両方とも黒澤明の映画「どてすかでん」でも使われている話である。

見てみた。

まず「牧歌調」は、中の良い兄弟分(発音は「きょうでぇぶん」だな)が酔っ払っているうちにいつの間にかお互いの連れ合いが入れ替わってしまう話。

まず河口初太郎と増子益夫。
映画では田中邦衛と井川比佐志が演じていたが、こちらでは荒川良々とミュージシャンの増子直純だった。
この底抜けに人が良くて、ちょっと抜けている感じを二人がよく演じている。

奥さんである河口良江と増子光代。
映画では吉村実子と沖山秀子。
ドラマでは、MEGUMIと高橋メアリージュンが演じている。
さらりと嫌味なくするりと演じている。

この演出、凄く難しいと思う。
いくらでも、複雑に描こうとすれば描けるのに、あっさりと嫌味なく、きれいに変化のない日常として描いている。
演ずる方は難しいと思う。
それをきれいに演じているのだから、素晴らしいのである。

「とうちゃん」は、刷毛職人と奥さんと五人の子どもの話。
実は、五人の子どもは全部父親が違っていて、それを知らないのは父親と子どもたちだけという設定。

まずは、沢口良太郎・みさお夫婦。
映画版では三波伸介(彼、黒沢映画の俳優だったのである)と楠侑子(別役実夫人)。
このドラマでは、塚地武雅と前田敦子である。
設定が奮っている。
「ナニ」で壊滅した街に応援に来たガールズグループの中で置いていかれてしまった女の子とその追っかけの男の子がそのままその町に住んでいるということ。
AKBの前田敦子に、落ちこぼれのアイドル崩れをやらせるのは、これはいけない。

そして、塚地武雅の演技。
子どもたちに父親が違うのではないかという質問を受けて、素直に嫌味なく自分の気持ちを述べている。
誰もが納得する素直な言葉である。
凄い演技。
三波伸介にも負けず劣らずである。

この先、この宮藤官九郎が、山本周五郎世界と黒澤明世界をどう解釈するか。
ちょっと楽しみである。