妻がテレビ東京で放映しているドラマ「季節のない街」を録画してみていた。
筆者もお相伴視聴である。

「季節のない街」、山本周五郎原作である。
黒澤明が1970年に「どですかでん」という題名で映画化した作品である。

頭師佳孝演ずる頭の温かい六ちゃんが、幻の路面電車を運転する運転士として、貧民窟(これは使っていい言葉か)の中を「どですかでんどですかでん」と言いながら走り回り、その中でその貧民窟にいる人たちの生活を描くという作品である。

まあ、「七人の侍」とか「椿三十郎」のような映画を期待した人たちには、酷評された映画であった。

20代に見た当時、あの六ちゃんを演ずる俳優さんは、相当黒澤明監督から演技指導をさせられたのではないかと、感じてしまった。

だって上半身は一切ぶれずに下半身だけを動かして、両手で電車を操縦しつつ、町の中を走るのである。
本人、運転士としてこの町を走っている人物として生きるようにとか、言われたのではなかろうか。

何もないところに、六ちゃんが「電車」を触るシーンなぞ、本当に幻の電車が見えるような映像になっていたのである。
作品の内容については論評しない。
ただ、新人監督では絶対に作らせてもらえなかった部類の作品である。
黒澤明映画の歴史、出演俳優やスタッフの歴史を語る上には欠かせない作品にはなっていると思う。

そんな映画を背景に持っている原作をドラマ化するのだから、宮藤官九郎、大冒険である。

個人的には、ろくちゃんの電車の操縦シーンが真っ先に気になった。
濱田岳演ずるろくちゃんは、大変に近代的。
現在の鉄道会社の職員の制服を着て、トラブル発生時の車内放送も大変に現代的だったのである。
あれ、これ、今の鉄道? と思ったが、一応路面電車なのだそうだ。

それから、ろくちゃんのお母さんは、片桐はいり、映画では菅井きんであった。
片桐はいり、「令和の菅井きん」の候補の一人である。

基本的には、12年前の「ナニ」の時に作られた多仮設住宅に住む人たちの物語。
月収十何万円以上あると退去する必要があるので、かなりクセの強い人たちが住んでいるようである。

Wi-Fiが入る場所が奇跡的に一か所あったり、その他さまざまな21世紀のシステムが入ってきている。
しかし、筆者は、たんばさん(「丹羽」と書くのだそうだ)、初太郎・益夫のコンビ、沢上良太郎とその奥さん、島悠吉とそのワイフ等々、映画「どですかでん」に出てきた懐かしい人たちが、どのように宮藤官九郎が21世紀に再構成するのか気になっている。
(もういろんなことを書きたいのだが、南伸介は、黒沢映画の出演俳優だったのである。)

今回見たのは、第一回。
この先も続くようなので、50年前の映画を思い出しつつイノベートされたドラマを確認していきたいのである。