悟りとは 2

テーマ:

 仏教では、悟りといっても1つや2つではありません。
 1段違えば人間と虫けらほど違う悟りが、低いものから高いものまで、全部で52あります。
これを「悟りの52位」と言います。

 それぞれの悟りの段階はどんな名前かといいますと、


 1段目から10段目を「十信
」、
(1段目を初信、2段目を二信、3段目を三信……10段目を十信)
11段目から20段目を「十住
」、
(11段目を初住、12段目を二住、13段目を三住……20段目を十住)
21段目から30段目を「十行
」、
(21段目を初行、22段目を二行、23段目を三行……30段目を十行)
31段目から40段目を「十回向

(31段目を初回向、32段目を二回向、33段目を三回向……40段目を十回向)
41段目から50段目を「十地
」、
(41段目を初地、42段目を二地、43段目を三地……50段目を十地)
といいます。

51段目は、ほとんど仏の悟りと等しいということで、「等覚」と言われます。

そして一番上の、下から数えて52段目の悟りが「仏覚」と言われ、仏の悟りです。
これ以上、上が無い、「無上覚
」といわれたり、妙なるさとり、「妙覚」とか、「阿耨多羅三藐三菩提」ともいわれ、仏の悟りには色々な名前があります。

 

 このさとりの52位の中で、40段目までを「退転位」といい、41段目以上を「不退転位」といいます。

退転」とは、油断すると悟りが崩れることをいいます。

 

 悟りを開くことを山登りにたとえると、最初はみんな「凡夫」といわれ、1段も悟りを開いていませんから、山のふもとにいるようなものです。

 それが、山に登り始めて、一合目まで登ると、ふもとにいたときより、遠くまで見えるようになります。

 二合目まで登ると、もっと遠くまで見えるようになります。
 二合目より三合目、三合目より四合目と、登れば登るほど見える景色が広がっていきます。

 51段までいっても、山の片側しか見えませんが、頂上まで登りつめたとき、360度ぐるりと見渡せるようになりす。

 そのように、悟りの段階を登って行き、最後、52段の仏の悟りに到達すると、大宇宙の真理のすべてを体得できるのです。

 

 では、悟りを開いたらどうなるのでしょうか?

 

 悟りを開いたらどうなるのか、悟りを開いた人の特徴が気になると思います。
 一般的には、たとえば悟りを開いた人は以下のようになると思われています。

・物事への執着がなくなる
・私利私欲や煩悩がなくなる
・常に冷静で、正しい判断をする
・見返りを求めず利他に徹する
・誰かと比較せず自分自身を冷静に分析し

 限界点を定めない
・問題がおきても不安にならない
・死を恐れない
・常に感謝の気持ちで過ごしている
・穏やかな表情で、親しみやすい笑みを浮

 かべる

 これはまあそう言われればそうも言えるというものもありますが、
 とりあえず悟りを開くと煩悩がなくなるのだろうという
 適当なイメージで言っているものと思います。

 悟りを開けば開くほど、煩悩は少なくなっていき、仏の覚りを開けば煩悩はなくなります。

 

 悟りを開くとどうなるのかということについては、それぞれの段階についてお経に詳しく教えられています。
 例えば不退転位の41段、初地の位は、初めて真の中道を観察できるようになり、仏性の理を見て、如来の智慧海に入り、衆生を幸せへ導き、大きな慶喜を得る位です。
 『大品般若経』には、以下のような10の特徴があると教えられています。

1.心が変わりにくくなる
2.すべての生きとし生けるものに

 平等に接する
3.布施をする
4.正しい仏教の先生に親しみ近づ 

 く
5.仏法を求める
6.出家する
7.仏身を愛楽する
8.仏法を説く
9.自惚れを破る
10.真実の言葉を語る

 初地に至れば不退転位ですので、やがて必ず仏のさとりを開くことができます。
 それで、41段の悟りを開くと、心に常に歓喜に満ちるようになります。

 

 仏教で悟りを開く方法は、お経の中で詳しく書かれています。
 お経の内容を学んで(教学)、教えのとおりに実践する(行学)することができれば、悟りを開くことができます。

 

しかし悟りを開くには、とんでもない長い時間、とてつもない厳しい修行に耐えなければなりません。

 私たち凡夫には到底無理な修行です。

 人類の歴史上、52段目の最高の悟りまで到達できたのはただ一人ですが、2番目は誰かというと、お釈迦さまの700年後、インドに生まれられた龍樹菩薩です。
41段の悟りを開かれました。
 その200年後には、無著菩薩
が、同じく41段の悟りを開かれています。

 人類で2番目に高い悟りを開いたのは、この龍樹菩薩と無著菩薩で、41段です。

 あの有名な面壁九年という手足が腐るほど厳しい修行をして禅宗を開いた達磨大使でさえも、30段程度の悟りだったといわれます。

 達磨さんの怖い顔は、30段の退転位では油断すると積み上げてきた悟りが崩れてしまうので、必死に我慢しているお顔なのです。

 天台宗を開いた天台大師でも10段程度ですから、悟りを開くのがいかに難しいかわかります。

 このように今日までの所、地球上で仏のさとりを開かれたのはお釈迦さまだけですので、地球上で唯一仏のさとりを開かれたお釈迦さまが、すべての人が本当の幸福になれる道を発見され、言葉を尽くして教えられたのが、仏教なのです。