昨日の記事でお釈迦様は、心身を悩み煩わせる煩悩を取り除き、安らかな悟りをひらくという仏道を説き広めた方であるとお話しました。

 ところで煩悩とはなんでしょう。

 皆さんは除夜の鐘を聞きながら、新年を迎える方も多いでしょう。

 除夜の鐘の数は108です。

 大晦日に響き渡る除夜の鐘は、108回鳴らされます。

 鐘が突かれる回数は、人々の心に潜む煩悩(ぼんのう)の数だと言われます。

 除夜の鐘は、108の煩悩に人々が打ち勝てるよう、祈りを込めて鳴らされます。

除夜の鐘と煩悩の関係性

 人々が持つ欲求が満たされても、心の辛さまで消すことは難しいというのが、仏教の教えです。

 これを「有無同然(うむどうぜん)」といいます。

「有無同然(うむどうぜん)」とは | かとチャンと仏教ブログ (ameblo.jp)

 美や権力、金など欲しいものを手に入れたとしても、人は決して幸せになれません。

 なぜならば、いくら物で満たされても心の渇きが止むことはないからです。

 人間は無ければ欲しい、有ったら有ったでもっと欲しいと欲望は際限が無いのです。

 この辛い苦しみを、除夜の鐘を打ち鳴らしながら一つずつ消していこうという考え方が、除夜の鐘が始められたきっかけになったといわれています。

 

ではなぜ108なのでしょうか?

 煩悩の数が108個と言われる由来には、いろんな説があるようです。代表的な説を二つご紹介します。

一つ目は

  • 人間の五感と心を合わせたものを六根(眼・耳・鼻・舌・身・意)と呼びます。
  • 六根は好・悪・平の3種類の感情に分けられます。
  • さらに浄(きれい)と染(きたない)の2つに分けられます。
  • さいごに過去・現在・未来の3つに分けられます。
  • これらを掛け合わせると6×3×2×3=108となります。

これが煩悩の数と呼ばれた説です。

二つ目は

人間の苦しみ四苦八苦に由来する説です。

 四苦(4×9=36)+八苦(8×9=72)=108となることから、これが煩悩の数になったという説です。

 いろんな説がありますが、要は数えきれないほど有るということです。

 

 さまざまな煩悩の中でも特に人の心を苦しめる3つの煩悩があります。それは、貪欲(とんよく)・瞋恚(しんい)・愚痴(ぐち)です。

 この3つの煩悩は、社会全体に悪い影響を及ぼす強力な力があると恐れられています。

 それを仏教では三毒の煩悩と呼んでいます。

三毒の煩悩 貪欲(とんよく) | かとチャンと仏教ブログ (ameblo.jp)

 このように心の平安を乱す煩悩は、誰の心にもあります。

 思い通りに行かず気持ちが苦しくなったり、さらに求めることで辛くなったりする心が煩悩というものです。

 ただし、無理に煩悩を断ち切る必要はありません。

 なぜならば、煩悩は人が生きていく為に必要なエネルギーでもあるからです。

 欲の中には食欲・色欲・睡眠欲なども含まれますが、これらの欲が無くなると、無気力な生活になり、生きてゆくことが困難になったりします。

 自らの煩悩を見つめ、受け入れ認めることができれば、煩悩の暴走を止めて上手にコントロールしていけるのではないでしょうか。