冬山登山や山スキーで人が亡くなると「たかが趣味ごときに命をかけるなんてばかげてる」という声を聞くことがある。
自分は晴れた日にしか登らないから、夏山にしか登らないから、バリエーションルートにはいかないから命はかかっていないというのだ。
一部ジャンルの登山、例えば山スキーやクライミング、雪山登山などは命懸けだが、普通の登山は命懸けではないという解釈なのだろう。
しかしこれは正しいのだろうか?
事実として夏山でも普通に遭難事故で亡くなる人はいる。トムラウシの遭難事故は典型例だ。
低山ハイキングであっても同様。毎年色んな低山で遭難事故が起きている。
夏山登山や低山ハイキングを楽しむ人は果たして自分の行為に対して「命がかかっている」という認識をしているのだろうか?
恐らくNO。まさか自分が山で死ぬなんて思っていない。
先日の白山も同様。
今日の登山で命を落とすなんて誰も思っていない。
みんな死ぬつもりは全くないのに、結果として命を落としてしまうのだ。
日常生活でも同様。
不慮の事故はいたるところに転がっている。
たまたまそこに居合わせただけで不幸にもなくなってしまう人がいる。
笹子トンネルの天井落下事故なんて宝くじが当たるよりはるかに低確率だ。
だから趣味にしても普通に生活するにしてもどちらも命懸けだといえるし、どちらも命懸けではないともいえる。
それぞれのリスクに各自がどこまで準備して対応できるか。それにかかっている。
夏山には夏山なりの準備やスキルが必要だし、雪山や山スキーにもそれぞれ準備やスキルが必要だ。
日常生活でも少しでも不慮の事故に遭わないような意識は持っておくべきだろう。
それでも完璧にリスクヘッジすることは難しい。夏山登山に比べて雪山登山や山スキーのリスクが高いことは確かだと思う。
だがリスクのことばかりを気にしすぎていたらやりたいことができない。
やりたいことを我慢してただ延命するだけの人生で本当にいいのか。
リスクを取りながらも充実した人生を送った方が良くないか。
人は必ずいつか死ぬ。長生きを目的とした人生ではなく、リスクバランスを考えながらも充実した人生を送っていきたいと思う。
多少リスクを取らなければ一生見ることができない景色がそこにはある。