BOOK REVIEW : 現代戦争論ー超「超限戦」渡部悦和・佐々木考博著 sancarlos | 護国夢想日記

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 日々夢みたいな日記を書きます。残念なのは大日本帝国が滅亡した後、後裔である日本国が未だに2等国に甘んじていることでそれを恥じない面々がメデアを賑わしていることです。日本人のDNAがない人達によって権力が握られていることが悔しいことです。

BOOK REVIEW :  現代戦争論ー超「超限戦」渡部悦和・佐々木考博著   sancarlos

 

著者がこの本を書きたかった理由が二つあるそうだ。

 

まず、1999年に出版され、全世界に衝撃を与えた「超限戦」が2020年、新書版として復刻されたこと(超限戦:喬良、王湘穂共著、角川新書。)です。

 

次に、中国の武漢で発生した新型コロナウイルスが世界中でパンデミックを引き起こしましたが、これに対する中国当局の対応がまさに超限戦的だったからです。

 

「超限戦」が民主主義諸国の人々、とくに軍人にとって衝撃だったのは、「超限戦」の本質が

 

目的のためには手段を選ばない。制限を加えず、あらゆる可能な手段を採用して目的を達成する」ことを徹底的に主張しているからです。

 

「超限戦」は邪道の戦い方、民主主義に対する明らかな挑戦だと思います。

そのため、「超限戦」に対するアンチテーゼとして「超”超限戦”」としての「現代戦」を書きたかったからだそうです。

 

著者が考える日本の現代戦の答えは、皮肉にも「韓非子」に記述されている「巧詐は拙誠にしかず」(巧みに人を偽ることは、つたなくても誠実であるのに及ばない)にヒントがあります。

 

我が国が目指すべき「現代戦」は自由、民主主義などの普遍的な価値観を基盤にした王道を歩む戦い方であるべきです。

 

本書は、「現代戦」について米国、中国、ロシアの「現代戦」を紹介し、最後に我が国の「現代戦」について提言しています。

 

本書における現代戦とは、従来の陸戦、海戦、空戦と情報戦、宇宙戦、サイバー戦、電磁波戦、ハイブリッド戦、アルゴリズム戦、テロ・ゲリラ戦、経済戦などあらゆる要素を含んだ戦争のことです。

 

「現代戦において米国が重視する技術」

 

米国の14分野の技術は、次の通り。

 

AI、バイオテクノロジー、測位技術(ナビゲーション)、マイクロプロセッサー、先進コンピューティング、データ分析、量子コンピューティング、輸送関連技術、3Dプリンター、ロボティクス、脳とコンピューターの接続、極超音速、先端材料、先進セキュリティ技術である。

 

「中国はあらゆる手段を使い科学技術大国やAI大国を目指す」

 

軍事の趨勢としてAIや無人機技術などの最先端技術の軍事利用があるが、この分野における中国の進歩には目をみはるものがある。

 

習近平主席は、「AIなどのイノベーションにより経済成長を牽引する」と発言し、国を挙げての科学技術大国、AI大国を実現しようとしている。

 

中国は、量子技術は軍事におけるゲーム・チエンジャーになりうると思っています。

 

米国が目の敵にしている「中国製造2025」の重点分野は、次世代情報技術(半導体、5G、)、高度なデジタル制御の工作機械、ロボット、航空・宇宙設備、海洋エンジニアリング・ハイテク船舶、先端的鉄道設備、省エネ・新エネ自動車、電力設備、農業用機材、新素材、バイオ医薬・高性能医療器材です。

 

これらの技術は、米国が重視する技術とほぼ重なっています。

 

「日本の現代戦」

 

中国、ロシア、北朝鮮は、日本の弱点である「情報戦」の分野を衝いてきます。

 

日本は中国の浸透工作に対する術を持っていません。

 

国際標準の憲法を持っていないし、スパイ防止法を持っていないし、対外諜報機関も持っていません。

 

それをいいことに中国は、浸透した政界、財界、マスメディア、法曹、アカデミアなどを通じて、日本が情報戦において態勢を整えることを徹底的に妨害しています。

 

この事情は、情報戦に限らず、宇宙戦、サイバー戦、電磁波戦、AIの軍事利用も同じような状況です。

 

この事態に我々は危機感を持たねばなりません。

 

「40年間続いた[宇宙の利用=非軍事利用]というガラパゴス思考」

 

宇宙開発事業団を設置する際、日本の宇宙利用を非軍事に留めたいという思惑がありました。

 

そのため、1969年に「平和利用に限る」との国会決議が採択されました。

それが転換するきっかけとなったのが、北朝鮮が1998年に行った弾道ミサイル・テポドンの発射でした。

 

その結果、政府は1998年に情報収集衛星の保有を決め、内閣が所有・運用する仕組みを取りました。

 

その後、2008年に「宇宙基本法」を制定し、「防衛的な宇宙利用は宇宙の平和利用である」という国際標準の考え方が認められたのです。

 

「サイバー戦でカモになっている日本」

 

防衛省と取引のある日本企業に対するサイバー攻撃が、次々と報道されています。

 

例えば、日本電気、三菱電機、神戸製鋼所、航空測量大手のパスコがサイバー攻撃を受けたことが、2020年1月下旬から2月上旬にかけて報道されました。

 

中国のハッカー集団が実行した可能性があります。

 

特に中国に進出している企業は高い確率ですでに侵入されているかもしれません。

 

「安全保障を含むサイバー・セキュリテイを所掌する官庁がない。」

 

サイバー・セキュリテイを所掌する省庁としては、総務省、経産省、警察庁が存在する。

 

しかし、安全保障を含むサイバー・セキュリテイ全体を所轄する省庁が存在しないのです

ASEANは、日本の指導でサイバー・セキュリテイ庁を作り、情報省を作り、サイバー・セキュリテイを所掌する官庁を作ったが、肝心の日本に所轄する省庁がないのです。

 

「すべての領域の戦いは電磁波を使っている」

 

中国やロシアの電磁波戦の能力向上は、日本の防衛にとって大きな脅威になっている。

 

尖閣諸島周辺に飛来する爆撃機や戦闘機には電子戦機が随伴していると言われている。

 

また、人民解放軍海軍の電磁波戦の能力が強化されています。

 

自衛隊にとって電磁波戦は日々のオペレーションの脅威になっています。

 

米軍が電磁波戦への投資を怠った影響が出ているので自衛隊も遅れていますが、その強化にこれから乗り出そうとしています。

 

航空自衛隊のF-35には電子戦支援と最新の電子攻撃の機能を保有していると言われています。

 

「軍事のすべての業務はAIを適用できる」

 

平時における全ての業務にAIを活用することから始めるべきだと思う。

 

AIを無人機に搭載することにより、兵器の知能化を実現する。

 

例えば、AIドローン、AI水上艦艇、AI無人潜水艇、AIロボットなどです。

 

AI開発のために人材及び予算を確保する必要があります。

 

防衛費の目標は、自民党の安保調査委員会が2017年6月に提案したGDP2%が基準になります。

 

国家全体の対応を阻害する要因が日本には多すぎる。

 

憲法九条の問題、安全保障や軍事を忌み嫌う風潮、各省庁の縦割りの問題、スパイ防止法の欠如、外国勢力の浸透工作に対する無知など、克服すべき問題を解決することが大切です。

 

それが中国の超限戦を克服することにつながると思うのです。