「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成29年(2017)9月17日(日曜日)
通巻第5436号
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「クルド住民投票は中止を」と米国が介入
イスラエルは「独立賛成ならまっさきに承認する」
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イラク北部のクルド自治区では9月25日に住民投票が行われ、独立に賛成か反対かを問う。
すでにイスラエルのネタニヤフ首相は「独立賛成という結果がでたら、まっさきに承認する」と発言した。
もっとも強い不快感を示しているのはトルコである。
9月15日、ホワイトハウスは「住民投票の中止」を呼びかける異例の声明を出した。
イラクはサダム・フセイン体制崩壊以来、事実上の三分割状態であり、スンニ派は弾圧を恐れてクルドとも一部共闘し、あるいは一部の軍人はISと共闘関係を構築した。
サダム時代、クルド族は徹底的に弾圧され、一部の過激派拠点には毒ガスが空から落とされ、相当数の犠牲者がでた。サダムの犯行とされるが、ほかの要因も考えられ、断定されるには到っていない。
この無政府状態だったイラク北部はシリア内戦の余波で、クルド系がキルクーク油田を確保し、また欧米の軍事支援も手伝ってシリアではIS退治に協力した。
クルドは、こうした経緯から再び独立への熱意が頭をもたげたのだ。
クルドは世界に分散して欧米各国ではコミュニテイィを形成している。とくにドイツにはトルコ系労働者が200-300万人ほどいるが、このうちの80万人がクルドと言われている。
もっとも多いのはトルコの山岳地帯で、およそ1100万人が遊牧生活を送り、イランに400万、イラクに60万、シリアに200万人と言われる。
トルコの場合、都市部にすむクルド族はトルコに同化しており、穏健派である。
さてクルドが独立に執着するのも、かつて「クルディスタン」という独立国家があったからで、1922-1924の僅か二年弱だが、ソ連の支援で主権国家が認められ、やがてソ連の都合で潰された。
極東シベリアにあった「極東共和国」の短命ぶりに似ている。
その後、クルド族はバルザニ率いるPDK(クルド民主党)が自治区内で影響力を行使したがPUK(クルド愛国党=タラバニ議長)に分裂した。
このPKDとPUKが住民投票で主導権を争っているが、どちらも決定的な影響力を発揮できないでいる。新しい世代のクルド族は、新党を結成して別の主張を始めているからだ。
いずれにしても一過性の独立騒ぎではなく、シリアの選挙区、イラクの政局次第では、コソボのように、瓢箪から駒という事態に展開するかも知れない。
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